アリの行列のなぞ「伏線回収」 小1から10年かけ、高校生が研究

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小西良昭
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 アリの行列はなぜ消えたのか――。17歳の高校2年生が研究をまとめた。小学1年の夏、行列が居間まできたのが嫌で、アリが家に入らない方法を見つけようと観察・実験を始めた。わいた疑問が伏線のようになり、10年かけて次々回収した。

小学1年の夏に始めた「じっけん」

 〈じっけんした日時 8月3日土曜日ごご2時から、ごご4時 てんき:はれ ばしょ:げんかん〉

 富山市の県立富山中部高校2年の堀田千智(ちさと)さんが小学1年だった2013年夏、自宅玄関前を行列するアリ(アミメアリ)の好き嫌いを調べた記録だ。

 6種類のエサを並べると、アリが集まったのはリンゴ、砂糖、ピーマンの順で、茶とコーヒー粉は食べなかった。

 かわいそうだから殺さずにアリが入らぬよう、嫌いなものを置こうと考えた。アリの好物のリンゴをラップで包んだものとアイスクリームのふたで囲ったものでも実験。目で見るより、匂いで餌を探すこともわかった。

 小学3年で結果が出た。「コーヒー粉が苦手」だと。巣穴にコーヒー粉をかけると、その上にアリは砂を運び、直接触れないようにしていた。4年では、紙粘土にコーヒー粉を25%以上混ぜて「アリよけ」を作った。「掃除の時、邪魔になる」と母に言われ、ボンドにコーヒー粉を混ぜたシール型に改めた。

 だが、6年生で壁に当たる。コーヒー粉がクロオオアリには効かないと分かったのだ。「あー、実験失敗だ」とショックを受けた。

ついに発見 万能の「アリよけ」

 課題は中学へ持ち越しに。小…

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    佐倉統
    (東京大学大学院教授=科学技術社会論)
    2023年12月21日21時20分 投稿
    【視点】

    すばらしい!の一言につきます。大学院生のとき指導教員に、「ひとつのことを3年やったら少し見えてくる。5年やったら形になる。10年やったら人に評価されるまでになる」と言われました。先生がわざわざこのようなことを言ったのは、大学院生でも5年、1

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    増谷文生
    (朝日新聞論説委員=教育)
    2023年12月22日14時46分 投稿
    【視点】

    大学に早急な研究成果を求めるような政策を続け、日本の研究力低下の要因を作ってきた政府の人たちにこそ、読んでもらいたい記事です。  堀田さんは、大学に進んでも研究を続けたいとのこと。どこの大学でも、これほど根気と好奇心がある学生は、大歓迎だ

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