第5回「藤井聡太八冠はひらめき型の天才ではない」 佐藤天彦九段が語る

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聞き手・村瀬信也
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 将棋界初の八冠を果たした藤井聡太名人・竜王(21)=王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖。類いまれな強さを持つ若き「天才」は、他の棋士たちに大きな影響を与えている。名人3連覇の実績を持つ佐藤天彦九段(35)もその一人だ。藤井八冠の登場で、将棋に対する考え方がどう変わったのかを聞いた。

 ――藤井八冠の強さを最初に感じたのはいつですか。

 「(2017年にネット番組で配信された)『炎の七番勝負』での藤井さんの結果と勝ち方を見て、『これはすごいのでは?』と思いました(羽生善治九段らと対戦して6勝1敗)。藤井さんの将棋を実際に見る機会はそれまでなかったのですが、あれだけのトップ棋士を相手にあのような勝ち方ができるのかと。強いし、ポテンシャルが高いなと思いました」

 ――どのような勝ち方だったのでしょうか。

 「例えば、『自分が1.5、相手が0.5』で形勢がいいとすると、藤井さんはその差を保つだけでなく、一気に突き放して勝っていました。それは相当読みの能力がないとできないことです。プロは、(相手が勝ちきるのが)最後まで難しくなるように指しますが、相手にそうやられても突き抜けてしまう勝ち方に見えました。かつて、(十七世名人の)谷川浩司先生とかがそういう勝ち方をされていたイメージもありますが、中学生の時点でそれができるのが驚きでした」

 ――その後の活躍は意外ではなかったのですね。

 「将棋は、まぐれやたまたまでそういう勝ち方はできません。その時点でそれだけのポテンシャルを示していたので、そこから肉付けをしていけば、大きな結果が出るのは予想できましたし、不思議なことではないと思いました」

 ――藤井八冠に影響を受けて、自分の将棋に対する考え方がどのように変わったのでしょうか。

連載「天才観測」

 藤井聡太八冠や大谷翔平選手ら前人未到の境地を切りひらく「天才」の活躍に沸いています。天才が社会にもたらすもの、人々が天才に託すもの、現代の天才について考えます。

 「藤井さんが本格的に活躍す…

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