働く人いなければお金の力は消える 田内学さんが語る「不安の正体」
私たちの不安の正体は、お金が足りないのではなく、「働く人」がいなくなることだ――。ゴールドマン・サックス証券の元トレーダーで、「社会的金融教育家」として活動する田内学さん(45)はそう話す。働く人がいなければ、お金は力を失う。「8がけ社会」がもたらす課題の本質は何か。どう向き合えばいいのか。近著「きみのお金は誰のため」(東洋経済新報社)が10万部を突破した田内さんに聞いた。
連載「8がけ社会」
高齢化がさらに進む2040年。社会を支える働き手はますます必要になるのに、現役世代は今の8割になる「8がけ社会」がやってきます。今までの「当たり前」が通用しなくなる未来を私たちはどう生きるべきでしょうか。専門家の力も借りながら、解決に向けた糸口を考えます。
――少子高齢化で、労働力人口が2割減、つまり「8がけ」になると予想される2040年。すでに、様々な分野で働く人の不足が顕在化し始めています。今後、社会が成り立っていくのか、不安は大きいです。
不安の源泉は、問題を解決する人の不足です。そもそも、私たちの社会は、誰かが働いてくれることで成り立っています。逆にいえば、働く人がいなければお金の力は消えます。
たうち・まなぶ 1978年生まれ。東大大学院を経て、ゴールドマン・サックス証券で16年間、金利のトレーダーとして働く。2019年に退職し、学生・社会人向けに金融教育に関する活動を行う。前著は「お金のむこうに人がいる」(ダイヤモンド社)
資産価値が上がっても無意味に
――とはいえ、政府は個人の預貯金を投資に回すことで、老後不安を解消しようとしています。
資産運用立国で日本復活というストーリーは、あまりにお花畑的で心配しています。2019年に『老後資金が2千万円不足する』という金融庁の報告書が出ました。確かに、個人にとってお金は大事ですが、いくらみんなが上手に資産運用してお金を増やしたとしても、将来の不安は解決しません。
――なぜでしょうか。
根本的な問題は、私たちが老…