ルッキズムの向こうへ③ 「ハーフ」について研究する有賀ゆうアニースさん
外見で人を判断することはレイシズムにもかかわる――。人種や差別、メディアを研究し、自身も日本とインドの「ハーフ」である有賀ゆうアニースさん(28)は、外国にルーツがある人へのルッキズムの背景に「典型的な日本人らしくない」という見方があると言います。偏見や差別を乗り越える「多元的な視点」とは。
――有賀さんが、レイシズムにかかわる課題を研究しようと思ったのは。
2013年の流行語大賞に「ヘイトスピーチ」がノミネートされて、遠いところの話と思われがちな人種差別は確実にあると感じたことは転機になりました。
大学生の時にNPOで人種差別に対するアクションや研修をやっていたこともあり、エスニシティーやナショナリズムによって噴出する問題を考えたいと、自分の研究テーマを定めました。
――外国にルーツのある人の見た目や身体能力などについて、「日本人らしくない」と表現されることがあります。
日本人らしくないという表現は、事実の描写というより、人種や民族において典型的な日本人であることがデフォルト(初めから決まっていること)だという前提に立って「らしくない」と相手を評価している表現です。それは相手を異分子扱いすることと裏表で、外見という本人が選択できない要素について言うことはルッキズムにあたると考えます。また、「日本人らしくない」特殊な身体能力を結果と結びつけて評価することで、相手の努力を過小評価、矮小(わいしょう)化することになるのではないでしょうか。
――意図的ではなくとも、偏見に基づいた差別的な言動「マイクロアグレッション」にもルッキズムはみられますか。
インタビュー調査では、外国人のタレントと見た目が似ているから、同じようなオーバーリアクションを期待されるといったことは、外国にルーツがある人と話しているとよく聞きます。僕の場合はインド系だから数学が得意そうとか、辛いものが好きそうとか。
でもこういう外見だから、人種だからと判断を押しつけることは、個人の生き方を制約することにつながっているのではないかと思います。
「日本人」の条件とは
――人種で人を判断する意識の根底にあるのは。
「日本人」観について、研究…