ガチ中華がブームになった理由 在日中国人が生きる「二つの時間」
ブームから踊り場へ 「ガチ中華」から見えるもの(上)
日本人向けにアレンジせず本場の料理を出す店「ガチ中華」は、2022年の新語・流行語大賞にもノミネートされ、ブームが続いてきました。そもそも日本人の舌にはなじみの薄いガチ中華が、どうしてはやったのでしょうか。街を歩きながら調べてきた「東京ディープチャイナ研究会」代表の中村正人さんに聞くと、ガチ中華の意外な現状と新しい方向性も見えてきました。上下2回で紹介します。
――どうしてガチ中華に関心を持ったのですか。
20年ほど前から旅行ガイド本「地球の歩き方」の中国エリアの編集に携わり、年に4、5回ぐらいは中国に行って取材していました。ところが、コロナ禍で渡航できなくなってしまいました。20年の春ごろ、残念でつまらなく感じながら、東京都内を歩いていたら、以前には中国にしかなかったような地方料理を出す店が増えていることに気づきました。
例えば、池袋で中国河南省のご当地麺「烩面(ホイミエン)」を出す店を見つけました。羊肉と骨を煮込んだ白濁スープに平麺が入ったものですが、15年に河南省に行った時に、鄭州駅前の食堂で食べたのと同じ味だったんです。今はこんなものまであるんだなと驚きました。一体何が起こっているのかと思って、調べ始めたんです。
――どのように調べたのですか。
「地球の歩き方」の取材で中国でやっていたのと同じように、実際に街を歩いて見つけたガチ中華の店を白地図に落としていきながら、気になる店には入ってみました。
「ガチ中華」はコロナ禍でも増えてきました。背景には、日中両国の対照的な環境で生きてきたオーナーたちの考え方も。日本人の嗜好の変化や中国の受験戦争など、意外な事情についても記事後半で紹介します。
「それ何?」「じゃあ一緒に食べに」
そこで見つけた珍しい料理を…