第4回イスラエル軍はなぜ「倫理」を語るのか 識者が喝破する占領との関係
イスラム組織ハマスの壊滅を掲げ、イスラエルが攻撃を続けるパレスチナ自治区ガザでは、半年間の戦闘で3万3千人以上が死亡した。
ガザ保健省によると、その多くを女性や子どもが占める。軍事衝突が頻発するこの地域でも、未曽有の被害規模だ。
一方で、イスラエルは、民間人の被害を最小限に抑えるため、安全な退避先の設定や、攻撃開始前の退避勧告などに努めていると強調してきた。
ネタニヤフ首相は「アフガニスタンやイラクで、米国はこんなことをしなかった。我々ほど世界で最も高い倫理を持った軍隊はいない」と誇っている。
実際は、どうなのか。今回の戦闘は、これまでのイスラエル軍の軍事作戦と比較して、「倫理的」と言えるのか。
イスラエルの政治社会学者で軍と社会の関係について詳しいイスラエル・オープン大学のヤギル・レビー教授は、「データで見る限り、今回の戦闘は過去のガザでの作戦と比較しても特にひどい状況だ」と話す。
レビー氏は、今回の作戦の最初の3週間における空爆での死者数を、2012~23年のガザでの四つの作戦の死者数と比較分析した。この調査によると、民間人の死者数は23年5月の作戦では全体の約3分の1、それ以前の各作戦では約4割だったのに対し、今回は約6割まで急増した。
イスラエル軍は近年、自軍の情報収集力と技術の発展により、「いかに正確に標的を絞ることが可能になっているか」を誇っている。
ただ今回の作戦の結果をみれば、「その正確さは、民間人の犠牲の抑制ではなく、標的に対してより大胆な攻撃をしかけるために使われただけだったと分かる」とレビー氏は話す。
なぜ、ガザへの攻撃は、ここまで激化したのか。
膨大な民間人の犠牲を出しながら、終わりが見えないパレスチナ自治区ガザでの戦闘。イスラエル軍は、自軍が「世界で最も倫理的だ」と強調しています。記事の後半では、その理由について、識者の見方を紹介します。
「軍が国の中心」という感覚
背景の一つとして考えられる…
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