高松刑務所(高松市)にある受刑者の学び直しの場「教科指導」の教室で、算数を教える上野忠昭さん(68)は、受刑者の頑張りに目を見張る経験を繰り返してきた。
昨年12月。カワモトさん(62)=仮名=はA3判で4枚分の掛け算のプリントを自習で仕上げてきていた。
「334×302」や「15472×3」といった筆算が計100問ほど。前回、上野さんが多めに用意していたプリントを教室に置き忘れたものだった。
「丸をつけながら感動しましたよ。1週間でよくこんなにやりましたね」
上野さんはカワモトさんをねぎらった。
この日は社会から続いて2コマ目の授業でもあった。学習を始めた10月の時のカワモトさんは、50分授業のうち30分も過ぎると集中力が落ちてミスが続いていた。2カ月が過ぎ、それもなくなっていた。
「皆さん2時間続いていますが、全然集中力が落ちていないですね。すごいです」
3人の受刑者の成長も惜しみなく褒めた。 上野さんは僧侶で、中高数学の教員免許を持つ。受刑者が自分の罪と向き合ったり、立ち直りを支えたりする「教誨(きょうかい)師」として刑務所に出入りしていたのが縁で、教科指導を始める2006年を前に講師を依頼された。
その時は「数学をお願いしたい」と言われたが、ふたを開ければほとんどの受刑者が「算数」からのスタートだった。
刑務所の中で受刑者が学び直す「教科指導」。高松刑務所で18年講師を続けてきた2人の僧侶は、受刑者の姿から逆に教えられたことがあると語ります。
高松刑務所は再犯者が9割以上を占める。基礎学力を欠き、再犯を繰り返してしまう受刑者は少なくない。
最初の授業では、勉強ができ…
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