専業主婦の私は「ダメなやつ?」 社会のバグに気づき、解けた呪縛
2年半前、女性(36)は育休を1年取った後、そのまま専業主婦になった。
大学院を卒業後、10年近く勤めた会社は常に成果が求められる過酷な職場環境だった。
いまは家事や育児に追われる日々。「秒速」で過ぎていく忙しさは変わらず、やりがいは尽きない。
けれど――。
「産休・育休取ってそのまま辞めるって、ダメなやつじゃん」
気にしなくて良いと言いつつ、友人たちは、そう苦笑した。
何より「私はキャリアから逃げたんだ」という思いが、女性の中で募っていった。
高校生のころから、「これからはどんどんキャリアを積んで、経済的に自立しないとダメなんだ」と強く意識してきた。
母は専業主婦で、家族の世話ばかり。自分の服もあまり買わず、口癖のように「私は良いから」と言っていた。
母にはかつて大学に行きたいという望みがあったことを知っていた。能力を生かし切れていないように見える母のことをもどかしく思い、「反面教師」にしてきた。
学部を経て、大学院では経営学を専攻した。熱意に満ちて入ったマーケティング関連会社では、法人相手の営業職に就いた。
「もっと、もっと」
夢中で働き、大事な取引先も任されるようになった。だが、3年が過ぎたあたりから、だんだん疲れてきた。
成果を出さない上司が営業会議でつるし上げられているのを見ると、いつ自分に矛先が向くかと身構えた。
ヒール靴で顧客の元へ「組織に貢献しないと」
繁忙期は深夜残業が当然で…
- 【視点】
共働き世帯が増えているとはいえ、実は妻がフルタイムの共働き世帯は増加傾向にはありません。 「男女共同参画白書 令和4年版」の特-8図(p.19)では、雇用者の共働き世帯(妻が64歳以下の世帯)を「妻がパート(週35時間未満就業)」の世
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