第1回身寄りなき93歳の遺産は20億円 ためこまず「ゼロ」で死ぬには

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 昨秋、東京都内のマンションで一人暮らしをしていた93歳の男性が居間で倒れているのを、訪れた証券会社の担当者が発見した。

 慌てて救急車を呼んで病院へ運んだが、男性はまもなく死亡した。

 男性は2018年に妻(当時88)に先立たれ、子どもはいなかった。頼れる身寄りはおらず、部屋はかなり散らかっていた。時折、ヘルパーや証券会社や銀行の担当者、税理士らが訪れるぐらいだった。

 税理士は男性の生前に、こんなアドバイスをしていたという。

 「万が一に備え、亡くなった後のことを任せられる『死後事務手続き』の契約を業者としておいた方がいいですよ」

 だが、男性は断り続けていた。「まだ早い」と。

個人金融資産2141兆円の6割を60歳以上が保有し、「老老相続」が当たり前の日本。老後に備えてお金をためこむのではなく、使い切る。そんな「DIE WITH ZERO(ゼロで死ね)」という考え方が今、静かなブームになっています。果たして実現できるのでしょうか。5回の連載で考えます

 男性の死後、自治体が戸籍を…

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この記事を書いた人
森下香枝
編集委員|中高年問題・終活担当
専門・関心分野
終活、中高年のセカンドライフ、事件など
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    末冨芳
    (日本大学文理学部教授)
    2024年7月27日12時0分 投稿
    【視点】

    【自分の死に向けての資産整理こそ元気なうちから】3度、家族の遺産整理をしました。若くても体調を崩すほどの手続きの山、メンタルストレス、故人の遺品を捨てる時に思い出も蘇る悲しさ、そして弁護士・税理士・行政書士などへの相談料・手数料がかかります

    …続きを読む
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    インベカヲリ★
    (写真家・ノンフィクションライター)
    2024年7月27日14時57分 投稿
    【視点】

    93歳で20億円残して死ぬということから、相続の話や、お金を使い切る話になるのだと思うけれど、私の知人に、10代の頃から貯金をしまくって、自傷行為と言えるほど質素な生活を続け、まともな食事もせず、人間関係も持たず、ひたすら通帳の額が増えるこ

    …続きを読む