第3回「平和をなりわいに」父になった元高校生平和大使がめざす持続可能性

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榧場勇太
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 長崎市内を流れる浦上川近くの賃貸マンション。7月8日、午前5時に起床した林田光弘さん(32)は、中学校で予定している原爆をテーマにした出前授業の資料作りに取りかかった。

 仕事に集中できるのは、5歳と1歳になる子どもたちが目覚めるまで。午前7時すぎ、ふたりに朝食を食べさせて保育園に送ると、すぐに中学校に向かった。

 都内の大学と大学院で国際政治などを学んだ後、3年前に故郷に戻ってきた。昨年、学校への出前授業や、修学旅行生への平和ツアーを事業として行う一般社団法人「ピース・エデュケーション・ラボ・ナガサキ」を立ち上げ、代表理事に就いた。

 「アメリカのある学校の校章はきのこ雲です」

 招かれた中学校では、林田さんの解説に、約120人の生徒たちから驚きの声が上がった。

 「長崎の人からすると『恐怖の象徴』であるきのこ雲が、核兵器を作っている人からすると強さを示す『誇り』。核兵器を作る産業で成り立っている街があります」

 これまでの平和教育は、核兵器は「怖い、悪い、無くしたほうがいい」と教えるのが当たり前だった。林田さんは、現存する核兵器が1万2千発あること、核兵器が必要だと主張する意見があることも丁寧に説明する。

 「ある街には核兵器の工場があり、そこで働く人のためのクリーニング店や食堂があって、その家族は、みなさんと同じように学校に通っています」

 立場の異なる人の視点も理解…

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この記事を書いた人
榧場勇太
長崎総局
専門・関心分野
平和、国内政治、地方自治、沖縄
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