「魔物」に感謝――。
宇部商の捕手だった上本達之はあの「サヨナラボーク」から26年を経て、そんな思いを強くしている。
1998年8月16日、第80回全国選手権の2回戦で豊田大谷(愛知)と対戦した。上本は2年生左腕の藤田修平をリードしていた。
「初回か二回に左打者が藤田の球を見て、『遅っ』てつぶやいたんです。なめてくれたらいけるんじゃないかと」
172センチ、60キロの細身の左腕は、130キロ台の直球にカーブを駆使し、のらりくらりと相手打線をかわした。
しかし、九回に2―2と追いつかれ、延長戦へ。十五回裏、無死満塁のピンチを迎えた。
上本は試合序盤からサインが相手側に漏れていると感じていた。
右打席に7番の持田泰樹が立…
【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら