冷笑の時代とフォトジャーナリズムの危機 写真家・岡原功祐さん寄稿

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写真家・岡原功祐=寄稿
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 「岡原くんも、クライアントはほとんど海外でしょう? 日本で発表する媒体なんてもうほとんどないでしょう」

 先日、数年前に引退したフォトジャーナリストと久々に会って話をした。約25年にわたるキャリアを通して、文字通り、世界的に活躍された方だ。アメリカの新聞社に長く勤め、米国内のニュースだけでなく、世界的なニュースの現場も渡り歩いた。欧米の雑誌や新聞の表紙や1面を何度も飾り、世界報道写真コンテストをはじめ、アメリカを拠点とする世界的なフォトジャーナリズムの賞であるPicture of the Year Internationalも受賞している。引退は個人的な理由だったそうだが、最後まで海外メディアの撮影の仕事で忙しく飛び回っていたのを知っていたので、突然の引退宣言に衝撃を受けた。

 フォトジャーナリズムが危機的状況にあると言われて久しい。

 何が危機かというと、一番大きいのは経済的な問題だ。雑誌や新聞が売れないのは今に始まったことではないが、メディアの経営難が続く中で、まず感じるのは、特に日本の雑誌が海外でのストーリーを扱うことが本当に減ったということだ。良い変化といえば、被写体のプライバシーへの配慮が年々高まっていることだろうか(これも、自己検閲につながる可能性があり、議論があるとは思う)。

 ベテランのフォトジャーナリストに聞くと、それこそ1990年代初頭くらいまでは、海外取材に行こうとするとまず経費をポンっと渡され、帰ってきたら20ページ分の掲載が用意されているなんてこともあったらしい。実際に本人から聞いた話なのに「らしい」と書いてしまうのは、2000年代から活動を始め、この業界が活況だった記憶のない私には、おとぎ話にしか聞こえないからだ。

 今の日本はといえば、危機的状況を通り越して、息も絶え絶えと言った方が正しい。そもそもフォトジャーナリズムのストーリーを毎週見せてくれる雑誌は、ニューズウィーク日本版ぐらいしか存在しないと感じている。以前は雑誌のグラビアでルポをやることもあった。週刊誌のアエラでも海外モノのルポを見ることがあったが、次第に減った。日本の雑誌や新聞の仕事だけで食べているフォトジャーナリストは、社員の写真記者以外、私の知っている限り存在しないと言っていい。私もそうだが、海外の新聞や雑誌の仕事がなければ絶対に生きていけない。そうした海外からの仕事もたくさんあるわけではないので、小さなパイを奪い合う状況だ。

 フリーランスの中には、いわゆるニュースの仕事以外にも、もっと長期で作品に取り組む人もいる。私はどちらもやるが、後者の比重が大きい。そういった作品も、2010年くらいまでは、日本の既存の媒体の中に発表できる場所がギリギリいくつか残されていた。

 今の時代、こんなことを書くと、「経済的に成り立たないのは、需要も必要もないからだ」と笑う人がたくさん出てきそうではある。

仏紙リベラシオンの問題提起 10年余り経て現状は

 かつてパリに住んでいた時に買った、ある日の新聞が忘れられない。フランスの主要紙リベラシオンが13年11月に発行した紙面には写真が1枚も使われていなかった。本来、写真が載るべき場所がすべて、枠だけをつけた空白になっていた。ヨーロッパにおいても、当時すでにフォトジャーナリストの仕事は徐々に減ってきていた。その窮状を訴えるとともに、彼らがいなくなったら紙面はどうなるか、それをアピールするためと書かれていた。写真が重要視され、紙面の印象を決定づけることが多いフランスにおいて、それは主要な楽器を欠いたオーケストラのようだった。

 あれから10年余り。その問題提起が生かされるどころか、状況はますます悪化している。

 フォトジャーナリズムの役割…

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    長島美紀
    (SDGsジャパン 理事)
    2024年8月22日15時0分 投稿
    【視点】

    どんなに文字やデータを並べても、一枚の写真、映像の持つ力、そのメッセージに叶わない。ケビン・カーターがスーダンで撮影した「ハゲワシと少女」、ドロシア・ラングの「出稼ぎ労働者の母」、長崎で撮影されたジョー・オダネルの「焼き場に立つ少年」

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    津山恵子
    (ニューヨーク在住ジャーナリスト)
    2024年8月25日11時54分 投稿
    【視点】

    ショートビデオのブームである。しかし、「瞬間に切り取られた写真のパワフルさには敵わない」。これは、米ニュース専門局MSNBCが朝の番組中で、写真の重要さを取り上げ、アンカーが言っていた言葉だ。23日朝、シカゴで開かれていた民主党大会が前日に

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