第1回ロシアの「情報工作」に揺れる小国 「第2のウクライナ」と恫喝

有料記事「ロシア支配」からの脱却 親欧米国のいま

キシナウ=中川仁樹
写真・図版
[PR]

 ある小国に、ロシアが「情報工作」を活発化させている。

 「大統領や与党は憲法違反を繰り返している」「偽りの選挙を止めよう」

 SNSに、そんな主張があふれていた。

 別のSNSでは、ロシア国旗が翻るモスクワ・赤の広場の写真が添えられていた。「北大西洋条約機構(NATO)が存在しなければ(各地の)戦争はない」。ロシアのプーチン政権のようなプロパガンダが繰り広げられていた。

 10月に大統領選と、欧州連合(EU)加盟の是非を問う国民投票を控える旧ソ連の親欧米国モルドバ。隣国ウクライナへのロシアの軍事侵攻が始まると、政権はロシアとの対決姿勢を強めて欧米への接近を加速させた。同時に、SNSで偽情報を拡散する親ロシア勢力への懸念が強まった。

【連載】「ロシア支配」からの脱却 親欧米国のいま

 欧州連合(EU)加盟を目指す旧ソ連のモルドバとジョージアでロシアの影が急速に色濃くなっています。飛び交う偽情報やウクライナ侵攻の影響を受けるなか、「ロシア支配」からの脱出への苦闘が続いています。

露骨なロシアの介入姿勢

 現地報道によると、詐欺などの罪で有罪となり、ロシアに逃亡してかくまわれている野党指導者イラン・ショル氏と元国会議員の2人は、6月の1カ月間にフェイスブックでの情報工作に約5万5千ユーロ(約900万円)を投じた。直前の1カ月の2倍近くになるという。

 こうした動きに、欧米諸国も危機感を抱く。5月に首都キシナウでサンドゥ大統領と会談したブリンケン米国務長官は、偽情報対策などに1億3500万ドル(約200億円)の支援を約束。欧米はモルドバとの軍事協力も進めている。

 それでも、ロシアの介入が止まる気配はない。

 ショル氏は4月、大統領選に…

この記事は有料記事です。残り1596文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    マライ・メントライン
    (よろず物書き業・翻訳家)
    2024年8月29日12時0分 投稿
    【視点】

    ロシアの情報工作がウクライナ戦争勃発後に「加速」したのは確かだが、もともとの仕込みの凄さにこそロシア情報戦の凄みがある、ともいえる。 ドイツにも、数年前からたとえば「偽装難民」エージェントを送り込み、そこで定住させながら「ひどいロシアから逃

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    服部倫卓
    (北海道大学教授=ロシア・東欧)
    2024年8月29日14時16分 投稿
    【視点】

    記事にあるとおり、従来慎重にバランスをとってきたモルドバが、ウクライナでの戦争により、旗幟を鮮明にせざるをえなくなったことは、この国の状況を難しくした。 個人的には、今モルドバに最も必要なのは、「ロシアに付け入る隙を与えないこと」であると考

    …続きを読む