東大、授業料値上げの事情 抗議デモ受けても、変わる大学財政
東京大学が、来年度入学者から学部の授業料を現在よりも約11万円値上げし、64万2960円にする方針を明らかにした。企業などとの共同研究や寄付などで収入を増やしてきたにもかかわらず、なぜ学生に痛みを伴う値上げに踏み切るのか。
東大の藤井輝夫総長らが、幹部教員らに授業料の値上げ案を最初に示したのは5月14日。翌日に各社が報道すると、すぐに学生たちから反発の声があがった。
値上げ反対の東大生が抗議デモ
同19日に文京区の本郷キャンパスで開かれた学園祭「五月祭」では、30人ほどの学生が抗議デモを実施。「東大生が全員、恵まれているわけではない」「東大が値上げすれば他大学にも広がってしまう」などと撤回を訴えた。経済的に厳しい学生の声などを集めたフリーペーパーを配ったり、安田講堂前にテントを張って反対を訴えたりするグループも現れた。教員の一部も反対を表明した。
こうした動きを受け、藤井総長は6月下旬、オンラインで学生に対し、値上げ案とともに財務状況の厳しさも説明し、理解を求めた。それでも学生らの反発は収まらず、幹部らは再検討を開始。7月中旬に25年度の入学者選抜要項と同時に発表する予定を、「学内で丁寧にコミュニケーションのプロセスを踏んでいる」として延期していた。
東大は値上げの理由として、教職員の人件費や教育関連に使われている運営費交付金の減額を挙げる。国からの配分額は約20年で80億円近く減り、23年度は847億円だった。このため産学連携や寄付金の獲得などに力を入れ、収入を増やしてきた。
一方で、世界と競うために必…
- 【視点】
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