なぜ、韓国戒厳軍は実弾を装填しなかったのか 「軍のダメージ深刻」
韓国の「非常戒厳」を巡る混乱の内幕が徐々に明らかになっています。韓国軍内部でも指揮系統や装備の選択などで混乱があったようです。防衛相直属機関の自衛隊情報保全隊での勤務経験があり、朝鮮半島情勢に詳しい軍事ジャーナリストの吉永ケンジ氏は「韓国軍が受けたダメージは深刻だ」と語ります。
――非常戒厳を巡っては、金竜顕(キムヨンヒョン)国防相(当時)が尹錫悦(ユンソンニョル)大統領に助言したことが明らかになりました。
韓国の戒厳法によれば、大統領が戒厳を宣布する場合、国務会議(閣議)を経る必要があります。戒厳の理由、種類(非常戒厳と警備戒厳)、対象地域と戒厳司令官を告示し、同時に国会に通報しなければなりません。軍を監督する立場の国防相が戒厳に関与するのは、国務会議と戒厳司令官の推薦に限られます。
――金氏は「(尹氏が卒業した沖岩(チュンアム)高校の同窓生グループの)沖岩派」と呼ばれていました。
韓国の国防相には予備役軍人が就任することが通例ですが、身分はあくまで文民です。そのため、軍事判断と政治判断の両方が求められます。出身高校の人脈がものを言う韓国で、金氏は沖岩高校で尹氏の1年先輩です。金氏は尹政権発足後、大統領警護処長と国防相に就任し、最側近になりました。金氏は文在寅(ムンジェイン)政権の際、中将で退役させられた過去もあります。金氏と、軍に人脈を持たない尹氏がお互いを必要としたのでしょう。
また、金氏は典型的な野戦軍人で、北朝鮮やスパイの摘発を担当する情報分野の経験がありません。戒厳宣布にあった「反国家勢力による国家転覆」について、どの程度正確な認識を持っていたのか疑問です。
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――戒厳司令官に指名された…
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