第1回OD、リスカ…「トー横」の仲間と生きた日々 救われて気づいたこと

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 東京・歌舞伎町の「トー横」(新宿東宝ビル横の広場)。黒ずくめの「地雷系」ファッションの子どもたちが酒を飲み、たばこを吸っていた。

 めっちゃ輝いてんなあ。

 2022年の春、きゅーりさん(仮名、18)は初めてトー横に足を踏み入れた。

 虐待で家に居場所がない。学校では問題児扱い。そんな子どもたちが集まり、笑い合っていた。「これまでがんばってきたんだから、大人は否定すんじゃねえよ」。そう言っているように見えた。

 その日から、きゅーりさんは「トー横キッズ」になった。仲間と市販薬の過剰摂取(オーバードーズ=OD)やリストカット(リスカ)をしながら日々を生き延びた。

市販薬を過剰摂取(オーバードーズ=OD)する若者が増えています。10~20代の薬物使用では最も多く、高校生の1.6%が過去1年にODの経験がある、と推計されています。背景には、親からの虐待、学校や職場になじめないといった「生きづらさ」があります。苦しいけれど生きていきたい。そんな若者たちの声を聞きました。

 関東地方で母と妹の3人暮らし。父からの養育費はなく、母は昼も夜も仕事で家を空けていた。

とりえがないと生きてちゃだめなんだ

 朝ご飯をお願いすると、「うるさい」とあしらわれる。学校から持ち帰った体操服は、洗濯されることなくそのままだった。小学校で始めたミニバスケットでは、穴が開いたシューズを縫って履き続けた。自宅で心休まるときはなく、ぴりぴりした母の機嫌を損ねないよう、妹とびくびくして生活した。

 「とりえがないと生きてちゃだめなんだ」。そう思うようになった。

 中学校では、笑って明るいキャラクターを演じた。バスケ部では自主練習を続け、1年生の後半でスタメンに選ばれた。「これで生きてていいんだ」。自宅に帰ると、夜10時から朝4時まで勉強した。

 本当はつらかった。「『がんばってるね、すごいんだね』ってみんなに言ってほしかった」

 私立高校の特進クラスに授業料免除で合格し、学級委員も任された。でも、勉強についていけず1カ月で退学、通信制の高校に入った。

 このころ、X(旧ツイッター)で見る東京の若者たちに憧れた。SNSで呼びかけた男性との性行為で得たお金で、原宿に行くようになった。

孤独だった自分の居場所

 母との関係も悪くなった。見た目について、友だちから心ないことを言われ、「整形したい」と伝えると、母は「なんでそんなことを言うの」と責めた。「こんなときだけ母親づらすんなよ」と怒りが爆発した。母は泣く泣く整形を認めた。

 ある日、電車を寝過ごし、新宿駅に着いた。もう家には帰りたくない。「トー横にいる」と母に伝えた。

 トー横では、「案件」と呼ばれる男性との性行為で、生活費を稼いだ。

 「稼いでくるね」「おつかれ、いくらだった?」

 そんな会話が日常だった。案件で数万円を渡されることもあった。自宅では、外食はチェーン店の一番安いメニューだったが、トー横では好きなだけすしが食べられた。毎日孤独だった自分にとって、最高の居場所だった。

真冬の深夜に倒れ、助けられて

 ODやリスカは当たり前だっ…

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この記事を書いた人
川野由起
くらし報道部
専門・関心分野
こどもの虐待、社会的養育、ケア、依存症、生活保護