家族のカタチを決めるのはだれ? 選択的夫婦別姓と同性婚が問うもの
選択的夫婦別姓や同性婚への反対理由に挙げられるのが、「伝統的家族観に反する」というものです。「伝統」とは? そもそも結婚や家族に関する法制度は何のためにある?
選択的夫婦別姓訴訟と「結婚の自由をすべての人に」訴訟を担当してきた寺原真希子弁護士に、いったいだれが「家族のカタチ」を決めるのか、話を聞きました。
――二つの訴訟に関わり、何が見えてきましたか。
「双方に共通するのは、別姓での結婚を希望するカップルと同性同士の結婚を希望するカップルがいずれも、姓や性的指向などといった、結婚の本質と直結しない事由によって、不合理に婚姻制度からはじかれているという点です。どちらも、永続的な精神的・肉体的結合を目的として真摯(しんし)な意思をもって共同生活を営むという結婚の本質や、家族としての実態を備えているにもかかわらず、です。法制度が現実に合うようにアップデートされていません」
「憲法にも民法にも『家族』の定義は書かれていません。『これが家族で、これは家族ではない』と、法律や第三者が押し付けることはできないからです」
――「家族のカタチ」は、社会が変化すれば変わっていきますよね。
「そうです。社会は初めから、変容することが想定されています。家族のカタチが変われば当然、それを包摂できるよう法制度も変わっていかなければなりません。国家は本来、変わりゆく社会で個人や実在する家族が幸せに暮らしていけるよう、法制度を整えるために存在するはずです」
「国家が法制度を作る際、どこまでを保護するかという線引きは避けられませんが、その線引きが合理的かということは、憲法が保障する個人の尊厳や平等といった観点や社会の変化を踏まえ、常に吟味されなければなりません」
「大日本帝国憲法や明治民法の時代には、国家が家族を統制していました。家制度の下、女性たちが従属する立場におかれていたわけですが、それに決別しようとしたのが、戦後にできた、婚姻の自由、個人の尊厳、両性の本質的平等を定める日本国憲法24条と、今の民法でした。ところが、民法が定める婚姻制度は、その後の時代の変化に追いついていません」
家族制度がアップデートできない二つの理由
――アップデートできていない理由はどこにあるのでしょう。
「二つあると思っています…