星野源さんの紅白曲、反発覚悟で批判した俳優「作品に罪なくても」

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聞き手・小川尭洋
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 大みそかのNHK紅白歌合戦で、歌手の星野源さんの歌唱曲として発表された「地獄でなぜ悪い」が別の曲目に変更されることが決まった。この曲が、性加害疑惑を報道された映画監督の作品の主題歌だったことなどにSNSを中心に批判が広がったことを受け、NHKと星野さんが曲目変更を発表した。批判の声をあげたひとりで、その発信が注目されたのが、ハリウッド映画などで活躍してきた俳優の松崎悠希さん(43)。問題提起した理由と、業界の性加害問題と向き合ってきた思いを聞いた。

園子温監督をめぐる週刊誌報道

園監督が作品に出演した複数の女性俳優に性的関係を強要したと、「週刊女性」が2022年4月に報道した。園監督は「事実と異なる点が多々ある」として同誌を名誉毀損で提訴。23年12月に和解が成立している。

「本当は発信したくなかったが」

 ――X(旧ツイッター)で《なぜわざわざ園子温(監督)の同名の映画の主題歌を歌うのでしょうか。NHKはなぜこれをOKにしたのでしょう?》とNHKの曲目発表当日の投稿に始まり、数日にわたり発信を続けていました。

 「発表された曲目を目にして、芸能界における性加害問題がフォーカスされている2024年の紅白で、なぜこの選曲なのかと驚きました」

 「紅白歌合戦という国民的な番組でこの曲が流されていたら、性被害を告発した方々が、取り返しのつかない二次被害を受ける可能性がある。ほかの性被害者たちも、『社会は性加害を大した問題ではないと思っているんだ』と絶望する可能性があると思いました。星野さんとNHKが曲の変更を早急に決断してくれたことは、エンタメ業界、日本社会全体にとって、とても良かったと受け止めています」

 「できれば発信したくなかった。この曲に救われた人たちがたくさんいることを知っていたし、大きな反発があることも予想していましたから。ただ、映画界に長年身を置き、様々な性加害問題を見聞きしてきた私としては、おかしいと言わなければならない責任を感じていました。誰かが言わなければ、まるで問題がなかったかのように扱われてしまう。それが何より怖かったのです」

 ――実際、星野さんのファンなどからは「疑惑があったのは監督で、楽曲に罪はない」との指摘もありました。

 「私が批判していたのは、こ…

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この記事を書いた人
小川尭洋
デジタル企画報道部
専門・関心分野
人種差別、海外ルーツの人々、歴史認識、政治と教育
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    江川紹子
    (ジャーナリスト・神奈川大学特任教授)
    2024年12月28日14時33分 投稿
    【視点】

     反論というほどではないのですが、どうしても疑問が浮かんでしまいます。「罪のない作品」に責任を科すことの是非、その責任はいつまで負い続けなければならないのか、という問いです。  この楽曲をテレビで流すと、性被害を受けた人を「社会は性加害を大

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    末冨芳
    (日本大学文理学部教授)
    2024年12月28日15時51分 投稿
    【視点】

    【公共放送としてのNHKの判断の甘さと、性暴力被害と真摯に向き合った勇気ある紅白曲変更】NHKは公共放送であるがゆえに放送法以外にも経営計画・基準・指針等をふまえた判断が求められます。たとえば「日本放送協会番組基準」には「第11項 表現・4

    …続きを読む