寂聴さんの法名、考えた兄弟子は「頼まれたわけではないんだけどな」

有料記事寂聴 愛された日々

岡田匠
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杉谷義純さんに聞く①

 燁文心院大僧正寂聴大法尼。「ようぶんしんいん だいそうじょう じゃくちょう だいほうに」と読む。瀬戸内寂聴さんの法名、わかりやすくいえば、あの世での名前だ。京都・三十三間堂本坊妙法院の杉谷義純(ぎじゅん)門主(80)が授けた。兄弟子にあたる杉谷さんに思いを聞いた。

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寂聴さんとゆかりのある方々へのインタビュー連載です。随時更新しています。

 ――寂聴さんとの関係を教えてください。

 彼女の師僧になったのは、岩手・中尊寺の貫首(かんす、住職)で直木賞作家の今(こん)東光(とうこう)さんです。彼女が51歳で得度する前、今さんが病気になり、今さんと友人だった私の父の義周(ぎしゅう)が得度式の戒師を務めました。そのとき、私が教授師を任されました。出家する彼女に付き添い、得度式の作法を教える役目です。初めて会ったのは、この得度式です。

 その後、今さんが亡くなり、彼女の師匠が今さんから父の義周に変わりました。その前から私は父の弟子ですから、彼女の兄弟子にあたります。お寺のことや天台宗に関することの相談に乗ってきました。

 ――2021年11月9日に寂聴さんが亡くなったあと、12月21日に妙法院で本葬があり、大導師を務めました。法名には、どんな思いが込められていますか。

 「寂聴」は、得度のときに今さんが授けました。戒名や法名と言いますが、天台宗では「燁文心院大僧正寂聴大法尼」のすべてを法名と呼びます。極楽での表札みたいなもので、あの世での名前ですね。「大僧正」「大法尼」は決まっていますから、私が考えたのは院号の「燁文心院」です。生前の功績や人柄、生き様が浮かび、その人をほうふつとさせる字がいい。

 「燁」は光り輝くという意味です。文筆で生きてきたから「文」。作家としも僧侶としても「心」が輝き続け、最後まで華やいでいました。彼女の仕事と人柄を表していて、ふさわしいと考えました。

 ――法名は、いつ、寂聴さんに頼まれたのですか?

「あとのことはお願いしますね」。寂聴さんにそう言われ、いつの間にか法名をつけることになっていたそうです。記事の後半で、杉谷さんがいきさつを語ります。

 「戒名をお願いします」と正…

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