命の格差なくしたい 沖縄を重ねカンボジアで小児がん治療に励む医師
「沖縄の医療を良くしたい」
嘉数(かかず)真理子さん(44)は、そんな思いで医学部に進み、地元・沖縄の公立病院などで小児科医として働いていた。ところが、2017年から長期ボランティアとしてカンボジアに渡り、現地で小児がんの治療に携わる。沖縄出身だからこそ、カンボジアに沖縄を重ね、滞在を続ける。
首都プノンペンの北約50キロにある古都ウドン。嘉数さんが働くこども医療センターはある。
嘉数さんによると、人口約1600万人のカンボジアでは、年間に600~700人の小児がんが発症すると推計される。その一方、半数以上が診断すらされずに亡くなっているとみられる。
なぜか。
カンボジアでは、数年前まで、脳腫瘍(しゅよう)や胚(はい)細胞腫瘍、神経芽腫と呼ばれる小児の固形がんは、手術できる医師がいなかった。そのため、現地の医療関係者の間で、「助からない病」と思われていたためだ。
脳腫瘍の男の子との出会い
そんなカンボジアに、嘉数さんは17年から滞在し、18年のこども医療センターの開設に携わった。開業後は診察も行い、これまで診た小児がんの患者は300人を超える。
いまでは「『治療をすれば元気なるんだ』と、病院からの紹介や親御さん同士の口コミで患者が集まるようになった」のだという。
昨年度の診療実績は113件。コロナ下の渡航制限で、ベトナムやタイなどに治療を受けに行っていた比較的余裕のある層が自国の医療に目を向けるようになったことも増えた要因だ。1治療施設あたりの年間の診療件数は、日本の小児がん拠点病院と比べても遜色ない水準だという。
そもそも嘉数さんが医師を志…