第5回満州に蔓延したアヘン、貧困層が犠牲に 現代の米国にもつながる病根
日本の人造国家・満州国の財政を支え、日本軍の資金源にもなったアヘンマネー。当時なぜ、日本は禁断のアヘンに頼ったのか。現代の社会にもつながる病根とは。アヘン問題の研究で知られる東海大の小林元裕教授(60)に聞いた。
――関東軍はじめ中国大陸に派遣された日本軍が、アヘンや麻薬の密貿易で資金を作ったという証言があります。
それは事実です。基本的には、日本軍の中央機関は「アヘンには手を出すな」という抑制的な傾向が強かった。しかし、現地軍は「機密費」として自由に使える金がいくらでも必要だった。お金がなければ、現地住民は占領者になびきませんから。それをアヘン取引が可能にしたのです。
上海など華中と呼ばれる地域では、軍の特務機関が密売組織と手を組み、軍人が表に出ないよう民間人に商売させる手法がとられました。青幇(チンパン)や紅幇(ホンパン)といった、現地の黒社会とうまく結びついて、資金源にした。私はこれを、日中の「負の協力体制」と呼んでいます。
「中国人が欲しがるから、供給しているんだ」というのが言い分でしょうが、一番の利益を得たのは日本軍でした。そして被害を受けたのは現地の人々でした。薬物は貧困層だけでなく富裕層も使用しましたが、最も被害を受けたのは、貧困に苦しむ人々でした。この点は歴史的に一貫しています。アヘンや麻薬の問題は貧困と格差の問題だととらえると、現代の問題につながります。
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――そもそも日本は、アヘンとどう関わってきたのでしょうか?
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