マリウポリ占領2年、散り散りの市民 市長「帰る希望失っていない」

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キーウ=藤原学思
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 ウクライナ南東部の港湾都市マリウポリがロシア軍によって「完全制圧」されてから、20日で2年になる。全面侵攻に終わりは見えず、散り散りになった元市民たちの疲れは募り続ける。それでも、17日に朝日新聞の取材に応じたボイチェンコ市長は「帰る希望を失ってはいない」と訴える。

 ボイチェンコ氏によると、2022年2月の侵攻前、マリウポリには市民と、親ロシア派勢力が支配する東部ドンバス地方からの避難民を合わせた約54万人が暮らしていた。

 「道路も交通機関も病院も学校もすべてがきれいで、文化の中心地で、工業都市でもあった」

 マリウポリは、ロシア、ウクライナ双方にとって、戦略的に重要な都市だった。侵攻後は激しい戦闘が続き、22年5月20日、最後まで残っていたウクライナ兵が製鉄所「アゾフスターリ」で投降した。

 ボイチェンコ氏によると、死者は「確実にわかっているだけで2万2千人」といい、数十万人は国内外に家を追われた。一方、10万人の市民がなお現地に残り、新たに10万人ほどがロシア側から「移住」した。これは、占領を既成事実化する試みだと指摘されている。

 「ウクライナに関するものを破壊し、民族のアイデンティティーを消し去り、別のものを植え付けようとしている。ソ連時代と同じだ」

 ボイチェンコ氏の93歳の祖…

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この記事を書いた人
藤原学思
ロンドン支局長
専門・関心分野
ウクライナ情勢、英国政治、偽情報、陰謀論
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    遠藤乾
    (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
    2024年5月20日5時0分 投稿
    【解説】

     ウクライナは大まかに言って三つの地域に分けられる:①占領区、②脱占領区、③非占領区の三つだ。  ①ロシアに占領されたままの地域。マリウポリはその典型だ。近時この地域の情報が極端に少なくなった。このインタビュー記事はそれを埋めるありがたいも

    …続きを読む
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    佐藤優
    (作家・元外務省主任分析官)
    2024年5月20日14時16分 投稿
    【提案】

     ロシアのメディア、特に「第1チャンネル」「ロシアテレビ」「独立テレビ」などの政府系テレビでは、復興したマリウポリ市の様子が、住宅、焦点、学校、病院などの映像とともに頻繁に報じられています。多くの市民がインタビューに応じています。もちろんこ

    …続きを読む
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