企業版ふるさと納税で「還流疑惑」 寄付金原資の事業を子会社受注か
福島県にある人口8千人余りの町で、国がすすめる「企業版ふるさと納税」をゆるがす事態が起きている。制度を使って町に寄付した企業の子会社が、その寄付金を原資とした事業を実質的に受注するという「還流疑惑」が持ち上がっているのだ。町議会が設置した調査特別委員会(百条委)が27日に報告書をまとめ、近く公表する。
桃の生産が盛んな小さな同県国見町に2022年、ある事業が持ち上がった。高性能な救急車を町が所有してほかの自治体に貸し出し、データを集めて救急車の開発に生かすというものだ。事業費の4億3200万円は、匿名の3社が「企業版ふるさと納税」を使って町に寄付したお金。町は「防災力が高まり、救急車関連産業の集積も図れる」と説明していた。
企業版ふるさと納税は、企業が自治体に寄付すると、税金が安くなる制度。寄付額の最大9割が法人税などから控除される。自治体が実施する特定の事業について寄付を募ることもできる。救急車事業はこの寄付を前提とし、最初の寄付があった翌月(3月)に町が立ち上げた「官民共創コンソーシアム」が立案。宮城県のワンテーブルという食品会社が事務局を務めた。寄付の使い道は「災害・救急車両の研究開発製造を通じた防災力向上」に限定されていた。その後、救急車事業の実施主体は町が公募したが、同社だけが応募し、そのまま委託先に選ばれた。
事態が急転したのは昨年3月。同社の社長(当時)が「(企業版ふるさと納税は)超絶いいマネーロンダリング」「行政機能をぶんどる」などと社外で語った音声データを、河北新報が報じた。
町は3社からの寄付を受け取…
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