第3回狙われた「両面人」 新疆ウイグル自治区、静かに姿消すイスラム文化
有料記事消えた聖地と研究者 中国・新疆ウイグル自治区の現場から
新疆ウイグル自治区=小早川遥平「反分離闘争の規律に違反した『両面人』を厳しく取り調べ、処分しなければならない」
2017年2月、中国・新疆ウイグル自治区トップの陳全国書記(当時)は、自治区規律検査委員会の演説でそう訴えた。
陳氏が語った「両面人」とは、中国共産党幹部でありながら党への忠誠心を持たない人をいう。汚職幹部を指すことが多いが、新疆では「分離主義者」に近いとの嫌疑をかけられた人々も含まれた。
陳氏が「両面人」を処分する方針を表明した2カ月後、今度は「過激化した」とされる住民のために教育矯正を行うことを定めた脱過激化条例が施行された。
その後、知識人から一般市民に至るまで消息不明になる人が相次いだ。
イスラム聖者廟(びょう)「マザール」についての論文で、政府のウイグル族への対応を批判的に論じていた新疆大学教授のラヒレ・ダウト氏も、その年の暮れに消息不明になった。
ダウト氏は長年の中国共産党員であり、論文は国家社会科学基金の助成を受けてもいた。当局側からみれば、陳書記のいう「両面人」だとみられた可能性もある。
ダウト氏は日本や欧米の研究者とも交流が深かった。消息を絶った後、中国政府のウイグル族の摘発により「姿を消した」と指摘される100人以上の知識人の一人として知られるようになった。
6年を経て、伝えられた消息
何が起きていたのか。米国務…