不動産が「ババ抜きのババ」になるとき 「限界分譲地」から見る日本
住宅地のはずなのに空き地ばかりで生活インフラも貧しい。首都圏の外縁部にあるそんな場所を「限界ニュータウン」「限界分譲地」と名付け、実態をユーチューブや著書で世に伝えてきた人がいる。自らもそうした分譲地に住みながら取材を続けている吉川祐介さんだ。利用することも手放すことも難しい「負動産」の課題が集約された場所だと吉川さんは語る。限界から見る日本の不動産の姿は。
大都市の外縁 売り主もあきらめた土地
――さびしさを感じさせる光景ですね。道路やコンクリートの擁壁が見えて住宅地のようですが、空き地ばかり。あちこちが雑草に覆われてもいます。
「私もそう感じます。この一帯はおそらく、開発されてから数十年以上が経過しているはずです。でも、一度も住宅は建てられていないようです」
――小さな看板が地面に倒れていますね。土地所有者の名前と業者の名が書かれています。
「一応まだ売りに出されている形なのです。でも買い手が見つからず、もう売り主もあきらめてしまったのかもしれませんね。それぞれの区画に所有者はいるはずなのですが、管理の放棄が進み続けています」
「このあたり一帯の千葉県北東部には、小規模ニュータウンや開発分譲地の『夢のあと』とも呼べるこうした場所があちこちに散在しています。『限界ニュータウン』や『限界分譲地』と私は呼んでいます」
――吉川さん自身も現在、そうした分譲地の一角にお住まいなのですよね。
「東京にいたら死ぬまで狭い貸家暮らし」
「結婚を機に東京都江東区から千葉県北東部へ2017年に引っ越してきました。下町の路地裏にある築50年近い貸家を引き払ったのは、住居コストの高い東京に住み続けるのは経済的に無理だったからです」
「当時私はタクシーの運転手で、妻は派遣社員として物流倉庫などで働いていました。貯金も資産もなく、東京にいたら死ぬまで狭くて不便な貸家暮らしです。どうせ裕福になれないのなら田舎へ移り、いつか格安の家を買えればと願って、地価の安い千葉県北東部を選びました。今いる分譲地は64区画ありますが、家が立っているのは私の家を含めて7戸だけです」
――なぜ、限界分譲地について調査・取材して発信することがお仕事になったのですか。
「最初は自分自身のためでした。分譲地なのに住宅より空き地の方が多く、数少ない住宅にも空き家が目立つ。なぜそうなっているのか、ここで暮らしていくにはどうしたらいいのかを知りたくて、情報収集用に『限界ニュータウン探訪記』と題したブログを始めたのです」
「反響は意外でした。何とか土地を手放したい、どうすればいいのかと悩む人の声ばかりだったのです。実態を自分で調べて伝えていこうと思いました」
――何が見えたのですか。
「法務局で土地の登記を調べ…
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