石垣島にミサイル攻撃基地? 「だまし討ち」と憤る安全保障の最前線
沖縄・石垣島の中央にある山のふもとを削り、島で初めての自衛隊基地を造成する工事が急ピッチで進められている。
濃緑の山林に囲まれた47ヘクタールの敷地には、明るいベージュ色の隊舎が立ち並ぶ。16日に開設される陸上自衛隊石垣駐屯地だ。「12式地対艦誘導弾」や「03式中距離地対空誘導弾」などのミサイル部隊や警備部隊の約570人が配備される。
人口5万人弱の島に、隊員や家族ら800人以上が移り住む予定だ。そのため駐屯地だけでなく、島の3カ所で隊員宿舎の建設が進んでいる。
南西諸島は長い間、防衛の「空白地帯」とされてきたが、軍事力を拡大する中国に対抗するため、防衛省は「南西シフト」を進めてきた。与那国島(2016年)、宮古島(19年)、奄美大島(19年)に駐屯地を次々開設し、今回の石垣島で一区切りとなる。中国が独自に設けた軍事防衛ライン「第1列島線」の島々にミサイル網の構築を急ぐ。
15年、政府から部隊の配備計画を伝えられると、住民は賛否で割れた。だが、中山義隆・石垣市長(55)が18年に正式に受け入れを表明。若者を中心としたグループが有権者の4割にあたる約1万4千筆の署名を集め、賛否を問う住民投票を求めたが、19年に市議会が否決した。その後、駐屯地建設が始まり、反対する市民の声はしぼんだ。
ところが昨年末、様相が変わる。岸田政権が敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を明記した安保関連3文書を閣議決定。12式地対艦誘導弾の射程を現行の約200キロから1千キロ程度に延ばす方針だ。こうした長射程ミサイルの配備先について、政府は「未定」とするが、石垣島に配備されれば、中国本土を射程に収めることになる。
防衛省は中国に対抗するため、南西諸島への自衛隊部隊の配備を加速させてきた。「敵基地攻撃能力」(反撃能力)の保有を決め、自衛隊が「盾」、米軍が「矛」という役割分担も変質しつつある。安全保障の最前線の島々では、当初の想定を上回る増強ぶりに新たな不安が広がる。
駐屯地の隣でサトウキビ畑を…
【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら
- 【視点】
抑止力云々という政府の理屈は相手の受けとめ次第なので怪しい、ということはこれまで申し上げてきましたが、兵器を配備するときのもう一つの大きな問題が地元の理解です。岸田内閣は敵のミサイル基地からの攻撃に反撃するために長射程ミサイルを持つと決めま
…続きを読む