第96回この子が殺されるなら私も一緒に 2カ月間の地下生活、耐えた先は…

有料記事

ウクライナ西部ブコベル=坂本進
[PR]

 イワン君は、ウクライナのマリウポリ出身の4歳児。

 カメラを向けると、屈託のない笑顔を見せたり、踊り出したり……。いたずら好きで、私が別の人の写真を撮っていると、そばに寄ってきて、私の背中や髪の毛を指でツンツンとつついてきた。こちらが笑いかけると、イワン君もゲラゲラと笑い出す。

 そんな姿からは想像できなかったが、イワン君はその3週間ほど前まで、爆発音が響き渡る薄暗い地下シェルターに2カ月間いた。ロシア軍の攻撃から逃れるため、マリウポリ市内にある製鉄所「アゾフスターリ」で避難生活を送っていた。

 マリウポリはウクライナ南東部の要衝だった。この街をロシア側が制圧すれば、親ロシア派が支配するウクライナ東部から、2014年にロシアが一方的に併合した南部クリミア半島までの沿岸部を陸続きで支配下に置く。ロシア側はこの地域を足がかりに、さらなる侵攻が可能になる。

 ロシア軍は3月初めからマリウポリの包囲を始め、激しい攻撃を加えた。産科病院や劇場への爆撃が相次ぐ中、ウクライナ軍の兵士たちが抗戦の拠点にしたのが、アゾフスターリだった。

 人口43万の港湾都市で、約…

この記事は有料記事です。残り2670文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

ウクライナ情勢

ウクライナ情勢

2022年2月24日、ロシアがウクライナへの侵攻を開始しました。国際社会の動きや、現地の様子などのニュースをお伝えします。[もっと見る]

連載ウクライナ危機 市民は今(全132回)

この連載の一覧を見る