羽生善治九段へ「今も地図は使わないですか?」探し続ける空白の場所
時代を継ぎ、歴史に刻む決戦が始まる。8日、将棋の羽生善治九段(52)が藤井聡太王将(20)=竜王・王位・叡王・棋聖と合わせ五冠=に挑戦する第72期王将戦七番勝負が開幕する。史上初の七冠制覇や永世七冠など数々の偉業を重ねてきた棋界の象徴は、後継者との初めてのタイトル戦を前に何を思っているのだろうか。そして、今をどう戦うか、どう生きるか――。決戦直前、挑戦者の声に耳を傾ける。
静かに何かを語りかけてくるような二文字だった。
昨年11月、前人未到の公式戦通算1500勝を記念して製作された扇子には「月光」の揮毫(きごう)があった。
昭和後期、中原誠十六世名人は「棋界の太陽」と呼ばれたが、昭和末期から平成期の30年もの歳月を頂点で駆け抜け、令和期に達するまで強烈な光源として時代を照らしてきたのは羽生善治だった。
まぶしい恒星のような棋士は、なぜ大きな節目に「月光」という言葉を選んだのか。インタビューの冒頭に聞いた。
「今までたくさん揮毫をしてきて、良い言葉って、もうなかなかないんですよ。大抵は誰かが書いちゃってますし」
少しおどけた様子で羽生は笑う。勝負の極北を生きる者の中で、あのように楽しげに笑う人を他に知らない。
そして続けた…
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