第2回「よーく聞いて」年下に注意された元校長 無職は嫌とこだわった末に
4月1日の朝刊。大阪府教委の人事異動を載せた新聞紙面に自分の名前を見つけた。
添えられた「退職」の文字に、すーっと力が抜けるのを感じた。
もうプレッシャーもストレスも感じなくていいんだ――。ほっとしたのもつかの間、待っていたのは虚脱感だった。
定年後の生活、イメージしていますか。 思い描いていた「リタイア後」の暮らし、過ごせていますか。 仕事に身をささげた日々が終わって、ほっとする暇もなくやってくる「クライシス」とは。記事後半で、「充実した定年後ライフへのヒント」も紹介しています。
大阪府交野市の加藤勤さん(73)は小学校の校長をしていた。子どもの死。荒れた学級。校内の事故。次々起きるアクシデントや難題に、4年間緊張を強いられっぱなしだった。
「定年になったらこれをやろう」と思いを巡らす余裕もないまま退職。当然、プランも目標も何もない。
この空白を何で埋めたらいいのか。
まず足を運んだのはパチンコ店だった。
現職のころから、趣味のパチンコは府境をまたいだ京都府内にある店を選んできた。もっと近い店もあったが、知り合いや保護者に会うと気まずいため片道20分近くかけて通った。
1週間パチンコ台の前に座り続け、思った。「何かしなければ。このままではダメだ」。2010年のことだ。
「1回しか言わないから、よーく聞いて」
当時、校長の再任用はいまほど一般化していなかった。非常勤講師に転じる手はあった。実際、同じく教員の妻は時給千円レベルで教壇に立つことを選んだ。だが、校長経験者の自分がいたら周りは気をつかうだろうと思うと、踏み切れなかった。
ほどなく、新聞の求人欄で教…
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