摂食障害を抱えながら働く場合、当事者や家族、雇用する側はどんな点に注意すればいいのか。一般社団法人「日本摂食障害協会」理事長の鈴木眞理医師に聞いた。
――摂食障害とはどんな病ですか?
患者の9割が女性ですが、男性も発症します。心理的な原因で、体重管理や食べ方に症状が表れる心の病です。
大別すると、明らかな低体重でも本人にその認識がなく、食事量を制限しようとする「神経性やせ症」、大量にむちゃ食いしては、体重増加を抑えるために吐いたりする「神経性過食症」、過食はするが、吐いたり下剤を使ったりしない「むちゃ食い症」に分けられます。過食性障害はやせ願望がなく、患者は男性の方がやや多いという調査結果もあります。
思春期で発症する人が多いのですが、中高年まで慢性化する人もいます。周囲が異変に気づき、正しい情報を得て、できるだけ早く適切な医療機関にかかることがとても大切です。
――就労についての実態は?
日本摂食障害協会の調査(2018年、回答数約300人)によると、「症状を持ちながら就労している人」は約7割、摂食障害のために仕事上の困難を感じている人は約8割にのぼりました。
就労した場合、雇用者が注意すべきことは三つあります。
一つ目は、本人から摂食障害だと伝えてもらったら、「伝えてくれてありがとう。一緒に考えていこう」などと共感を示して、具体的な相談をしながら、まずは通院時間を確保しましょう。
二つ目は、昼食は決まった時間に落ち着ける場所で1人でとる、おやつの時間や宴会や歓送迎会の参加を強要しない。最初から免除する、本人が望めば冒頭のあいさつだけにするなどの配慮がありがたいのです。当事者の多くは他の雇用者と変わりませんが、食事に関係する対人関係に困難を抱えています。
三つ目は、本人の特性、状況を相談しながら、任せる仕事の量を見極めることです。
患者の多くが自己肯定感が低く、他人からの評価がとても気になる、まじめで完璧主義な人です。物事のとらえ方も0か100になりがちです。常に深読みと先読みをして、頼まれれば、できそうになくても引き受けてしまうこともあります。
上司としては「まじめで仕事ができる部下」と見過ごしがちですが、本人はとても疲れています。結果、過食嘔吐(おうと)がひどくなったり、体重が減ったりして、1、2年後に休職や退職してしまうケースも多くあります。実際、調査でも、「摂食障害のために仕事やバイトを辞めたことがある人」は2人に1人にのぼりました。
本人は言い出せないけれど、低体重などで摂食障害が疑われる場合は、受診を勧めましょう。その場合、やせていることや過食にばかり注目して、「太った方が可愛い」「過食嘔吐はやめるべきだ」と声がけしがちです。でも、その背景に配慮して「大変だったね」「頑張ったね」という思いで向き合うことが大切です。
――就職時のポイントは?
調査では、「仕事探しに困難…