摂食障害を抱える人たちが、安心して働き続けるにはどうすればいいのか。大阪公立大医学研究科教授で、摂食障害と就労に詳しい精神科医の井上幸紀さん(61)に、現状や課題を聞いた。
――摂食障害と就労の現状について、どうみていますか。
摂食障害の患者数の増加と治療期間の長期化により、患者は若い世代から中高年世代まで幅広く存在しています。摂食障害はだれもがなり得る病気といっていいでしょう。働く女性のなかにも摂食障害が増えており、特にコロナ禍によるストレスをきっかけに、拒食や過食に向かう人たちが増えている印象があります。
私は企業で産業医もしていますが、社員からの相談は増えています。「やせているようだが仕事を続けてもらっていいか」と、上司から相談されることもあります。
――こうした相談に対し、どのように答えていますか。
本人の困り事は食事、人間関係など色々あります。本人の了解が得られれば、どうすれば働きやすくなるのか、上司や看護師、保健師らと話し合う機会をつくることを勧めています。
その際に大事なのは、会社側が病気を特定しようとするのではなく、「あなたのことが心配」と共感を示すことです。
――職場の支援は十分できているでしょうか。
摂食障害の病態は多岐にわたり、治療も長期に及ぶこともあります。そのため、患者の人生の一部として理解したうえで、対応する必要があります。
職場は重要な生活の場の一つで、職場のストレスは食行動に影響を与えます。しかし、職場における摂食障害への対応は十分とはいえません。
――具体的なデータはありますか?
大阪産業保健総合支援センタ…
- 【視点】
摂食障害で仕事をしている人は多いと思うけれど、生活が維持できるということは、それだけ症状が長引くということでもあると思う。 何人か話を聞いたことがあるけれど、吐けない過食で、限界まで太って、どうにもならなくなったという人だけが早く回復して
…続きを読む