仕事のストレスは、「やけ食い」で解消していた。
東京都の久木野義和さん(43)は20代のころ、ファッション関係のカタログ制作などを手がける印刷会社に勤めていた。
ジュエリーなど高級感や光沢感が求められる商品の印刷は、特に神経を使った。納期や品質管理をめぐるシビアな交渉が続き、帰宅は終電という日も珍しくない。
休日になると、1人で焼き肉やケーキの食べ放題に通った。
焼き肉店では、脂っこいカルビを皿の上に山盛りに積み上げ、ひたすら焼いた。
「フードファイターがいる」。周囲の客から、そんな声が漏れるほど食べ続けた。
過食の回数は、次第に増えていった。
仕事から帰宅後、あらかじめ買っておいた食パンやバナナをおなかに詰め込んだ。
このころ、さまざまな事情から同居する親と衝突することが増え、家でも居場所がない思いをしていた。
食べたものを戻すのを、親に気づかれぬように、ランニングに行くふりをして、公園のトイレで吐いた。
家族に過食嘔吐(おうと)を隠しきれない状況になるのに、それほど時間はかからなかった。
休日は、1日の大半を自宅のダイニングで過ごすこともあった。バナナやサラダから食べ始め、焼きサバ、グラタン、チーズ入りオムレツなど、食べたい料理を次から次へとつくった。食べながら、次の料理を考えた。そして、吐いた。
夜にはふらふらになり、倒れ込むように眠った。そのうち、常に空腹を感じるようになり、夜中も空腹のため目が覚めて眠れなくなった。
職場でも、食欲をコントロールできなくなった。
ランチタイムに、「もったい…