第6回ストレス解消の1人焼き肉が 摂食障害で苦しんだ43歳、第二の人生

有料記事摂食障害×働く

編集委員・清川卓史
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 仕事のストレスは、「やけ食い」で解消していた。

 東京都の久木野義和さん(43)は20代のころ、ファッション関係のカタログ制作などを手がける印刷会社に勤めていた。

 ジュエリーなど高級感や光沢感が求められる商品の印刷は、特に神経を使った。納期や品質管理をめぐるシビアな交渉が続き、帰宅は終電という日も珍しくない。

 休日になると、1人で焼き肉やケーキの食べ放題に通った。

 焼き肉店では、脂っこいカルビを皿の上に山盛りに積み上げ、ひたすら焼いた。

 「フードファイターがいる」。周囲の客から、そんな声が漏れるほど食べ続けた。

 過食の回数は、次第に増えていった。

 仕事から帰宅後、あらかじめ買っておいた食パンやバナナをおなかに詰め込んだ。

 このころ、さまざまな事情から同居する親と衝突することが増え、家でも居場所がない思いをしていた。

 食べたものを戻すのを、親に気づかれぬように、ランニングに行くふりをして、公園のトイレで吐いた。

 家族に過食嘔吐(おうと)を隠しきれない状況になるのに、それほど時間はかからなかった。

 休日は、1日の大半を自宅のダイニングで過ごすこともあった。バナナやサラダから食べ始め、焼きサバ、グラタン、チーズ入りオムレツなど、食べたい料理を次から次へとつくった。食べながら、次の料理を考えた。そして、吐いた。

 夜にはふらふらになり、倒れ込むように眠った。そのうち、常に空腹を感じるようになり、夜中も空腹のため目が覚めて眠れなくなった。

 職場でも、食欲をコントロールできなくなった。

 ランチタイムに、「もったい…

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この記事を書いた人
清川卓史
編集委員|社会保障担当
専門・関心分野
認知症・介護、貧困、社会的孤立
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    島沢優子
    (ジャーナリスト・チームコンサルタント)
    2023年10月12日11時0分 投稿
    【視点】

    摂食障害の大きな要因として、親との関係性が色濃く存在しています。成人から小学生まで患者さんや、彼らと対峙する心理の専門家の取材をしましたが、学業成績や仕事面で親御さんからのプレッシャーや自己肯定感を育む子育てでないことが影響していました。こ

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2023年10月12日11時28分 投稿
    【視点】

    この記事を読んで、自分自身が食べることについて美意識や健康の問題を抱えていることに気づく男性がいるかもしれない。男性の経験談の発信は相対的に少なく、支援も女性向けに偏っている印象があるが、実際は誰でも摂食障害になる可能性があり、経験談に触れ

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