二つの戦争と米中間の緊張 2024年、世界はどこへ向かうのか
有料記事イスラエル・パレスチナ問題トランプ再来ウクライナ情勢
ワシントン=望月洋嗣12月半ば、ワシントンの中心部から少し離れた大使館街にある中国大使館に足を運んだ。米中が国交断絶状態にあった約半世紀前、卓球を通じて両国の草の根交流が実現した「ピンポン外交」を記念するイベントに招かれたのだ。中国大使も自らラケットを握り、米中の友好をアピールした。だが、卓球台を行き来する小さな白球を追いながら私が連想したのは、米本土に飛来した中国の気球を米軍が撃墜した10カ月前の事件だった。11月のバイデン大統領と習近平国家主席との首脳会談で米中間の緊張は一時的に緩んだが、本格的な関係修復の兆しはまったく見えない。
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憂慮すべき状況は他にもある。世界で続く二つの戦争だ。中国大使館からの帰路、隣接するイスラエル大使館の前を通ると、イスラム組織ハマスに誘拐された人々の写真が掲げられ、敷地には無数の小旗が立っていた。10月の攻撃に端を発するパレスチナでの戦火は、ワシントンで超党派の関心を集める。その一方、2024年2月にロシアの侵攻開始から2年を迎えるウクライナ情勢への注目度は著しく低下した。中国大使館でのイベント前日、ウクライナのゼレンスキー大統領はホワイトハウスでバイデン大統領と会談し、終わりの見えない戦いへの支援を求めた。だが、ゼレンスキー氏が米連邦議会で初めて演説した1年前に感じられたウクライナ支援への熱気は、いまやワシントンから消え失せたかのようだ。
ウクライナとイスラエルでの二つの戦争と、冷戦にも例えられる米中間の抜き差しならない対立は、2024年も、世界情勢を左右する大きな要因であり続けるだろう。二つの戦争はどのような展開をたどり、米中間の緊張は何をもたらすのか。米国ではトランプ前大統領が返り咲きを目指す大統領選もある。
新年の世界はどんな様相を見せるのか。外交や安全保障の経験をふまえて、現実的な予測を語ってくれそうな米国の識者に尋ねた。
パレスチナの戦闘「あと2カ月ほどで」
話を聞いたのは、ワシントンにある最有力のシンクタンク米戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・カンシアン上級顧問(72)。12月半ばの金曜日の午後、人気の少ない同研究所の会議室で、カンシアン氏は、私が事前に取材の趣旨を知らせたメールを印刷して手元に置き、一つ一つの質問に答えてくれた。
カンシアン氏は中国が台湾に…
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