小林製薬(大阪市)の機能性表示食品をめぐる問題で5月末、政府は対応策をまとめました。消費者庁が設けた有識者検討会で座長を務めた中川丈久神戸大学大学院教授(行政法)に、制度の問題点と、見直し内容の意図について聞きました。
――機能性表示食品制度を廃止すべきだという声も市民団体からあがっていました。しかし、今回の議論は制度自体を問うことからは出発していません。なぜですか?
議論のきっかけとなった小林製薬の事故の原因は究明中ですが、あらゆる食品に発生する可能性があった事故で、機能性表示食品という制度が無かったなら起きなかった事故ではありません。このため少なくとも機能性表示食品ならば事故を防げるように、製造工程管理などに見直しの議論を絞りました。
――機能性表示食品として、健康に効き目があるようなことが書かれていれば、多くの消費者がそれを信頼して購入します。その結果、被害が広がったとも考えられます。
それは否定できません。しかし、機能性表示食品は企業が機能や安全性に関する根拠を、消費者庁を通じて公表する制度に基づいています。その制度をなくすと、根拠を一切公開しないで販売できる「いわゆる健康食品」が増えていく恐れもあります。そのことを考えたら、機能性表示食品の存在意義はあるのではないかと思います。
――検討会での議論のポイントは?
現行の法令は、機能性表示食品として販売するためには、どのような届け出や表示の仕方が必要かは定めています。しかし、製造工程管理をどうするか、健康被害の情報が寄せられた場合、業者はどう対処すればいいのか、といった点については、明確な法令基準が定められていません。
検討会では、こうした点を問題視し、安全な商品を消費者に届けるために必要な仕組みを法令で義務付ける必要があると訴えました。当たり前の改革を提言したという意識です。
――「当たり前」とはどういうことですか?
消費者庁のガイドラインには…
- 【視点】
今回の改革が「当たり前だった」という中川座長。その意味は、機能性表示食品は制度導入当初から、法的仕組みの整備が不十分だった、そこを今回補ったということ。ではなぜ開始から9年も経つのにその間に改善されなかったのか、と問われての答えが興味深い。
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