桜之本丸

山城国のとある本丸。ここで起きる日常と戦いの日々を記録します。

2022年01月23日

物語の現身


鯰尾 春の夜



審神者「……………」

鯰尾「あーるじ」

審神者「なに?」

鯰尾「夜空を見て何考えているの?」

審神者「…………。
手紙が届くのは明日だけど……。
今頃なのかなって……過去に対して今頃って言うのも変な話だけどね」

鯰尾「…………」

審神者「なんですかー?」

鯰尾「あいつの分まで主にぎゅーってしたくなった」

審神者「菖蒲はそんなことしないって」

鯰尾「じゃあ俺がしたいからする。 それならいい?」

審神者「寒いですしね。 いいですよ」

鯰尾「ありがと。 ……こうしていると妙に落ち着くや」

審神者「……鯰尾はさ」

鯰尾「ん?」

審神者「答えなくていいけど……。
っていうか、答えないでほしいんだけど……。
……鯰尾は、何を思い出したの?」

鯰尾「失くした昔の記憶だよ。 それがどうかした?」

審神者「そうじゃなくて、もっと具体的に」

鯰尾「俺と、前の主が焼かれた時のことを思い出した。
手紙にもそう書いただろう?」

審神者「…………」

鯰尾「この答えじゃご不満?」

審神者「……刀剣男士の記憶は、人が語る物語によって形成されている。
それは自分の記憶で自分の過去を誤解していた山姥切国広や今剣を見れば明らか。
彼らは修行先で自身の物語を多角的に捉えることで、誰かが語り継いだ一方的な視点だけじゃない。
他の視点で語られている自分の姿を知り、今の自分とその立ち位置をしっかり掴んで帰って来た」

鯰尾「…………」

審神者「鯰尾は……。
貴方の物語は諸説ある。
『大坂城で前の主と共に燃えた』の一言では、その記憶の全ては語り尽せない。
……紫電は言ってた。
自刃に使われたことを思い出したって。
だけどそれは私の知る限り、『そういう説もある』という鯰尾藤四郎に纏わる物語のうちの一つ。
だから……一振り目の貴方が思い出した記憶は、違う過去なんじゃないの?」

鯰尾「…………ふぅー。
……主は俺のこと、何もわからないんだね」

審神者「わ……、わからないですよ。 申し訳ありませんね」

鯰尾「うぅん。 ありがとう。 わからないでいてくれて」

審神者「はい?」

鯰尾「……あぁ、でも、何もっていうのは訂正。
一つ、とってもわかってくれていることがある」

審神者「何?」

鯰尾「秘密」

審神者「えー。 教えてよ」

鯰尾「教える必要なんてないだろ。 主はわかってるんだから」

審神者「何がわかってるんだかわからねえ……」

鯰尾「あははは。 大丈夫。 主がわからなくても、俺はわかってる」

審神者「だいじょばねーのです。
……菖蒲は何を思い出しているのかな」

鯰尾「見当がつかない?」

審神者「…………」

鯰尾「その顔はついてるっぽいね」

審神者「あの子の異様な人間嫌い……。
いや、嫌っているのとはちょっと違う……。
なんて言うの? 笑顔で丁重に突き放してくるあの感じ。
私の顕現のさせ方の影響なんだと思ってた。
……実際、それが大きいんだと思う。
でも……………」

鯰尾「……前の主のことが、俺は大好きだった。
会話なんて出来ないし、したこともない癖に、まるで心が通い合っているみたいに感じてた。
俺が愛しているのと同じように、愛してもらえてるって……言葉で通じ合えなくても、この気持ちは通じ合えているって。
よくある恋愛の初期状態かよ!ってくらいに……心で愛し合えていることを、信じてた。
そんな気分で相手に想いを寄せていた時に、急に物扱いされて炎の中に置き去りにされたりしたら……ね」

審神者「…………」

鯰尾「行かないでほしい、連れて行ってほしい、それが無理ならせめて一度だけでも振り返ってほしい……。
その思いが何一つ届かなくて、「ああ……、届かないんだな。 今までも、俺の気持ちは一度も届いていなくて、何一つ伝わっていなかったんだ。 ずっと一緒にいたようで、こんなにも……俺たちの距離は、距離なんてもので表せないくらい、どうしようもなく遠かったんだ……」ってようやく現実が見えた。
好きだった気持ちが千切れたその痛みが鋭くて、何も伝わっていなかった虚しさが、なんだか……おかしくてさ。
痛みが激しいほど、目に視えないこの心が愛されていると自惚れた自分の浅はかさを後悔した。
……自分を置いて逃げた、あの人のことが憎いんじゃない。
あの人は人間で、俺は刀だった。
その当然の事実をあの人は正しい認識で受け容れていただけで……。
……俺が、勝手に、愛されてるって誤解して、勝手に傷ついただけだから」

審神者「……」

鯰尾「そんな事があったら、後悔して強く願うはずだ。
『もう二度と、こんな誤解はしたくない』って。
記憶を失くしても、その思いは忘れないぐらい、強く……」

審神者「……鯰尾も、そうだったの?」

鯰尾「俺? 俺は違うよ。
現に出会った頃から主に対しても馴れ馴れしかっただろ?」

審神者「そ、そうだけど……でも、今、」

鯰尾「主は俺のこと、何もわからないんだね。
……つまりはそういうこと。 ……意味、わかる?」

審神者「…………」

鯰尾「今のはあくまで、俺が想像した二振り目のあいつの心の代弁。
あいつの事だから。思い出した過去のことは何も語らないような気がするんだ。
だからこれは、ささやかな嫌がらせだ」

審神者「嫌がらせ?」

鯰尾「うん。 ……俺は、主のお陰で色んな心の整理がついた。
整理なんてつけたくなかった事さえも……。
上手く整理して、大事な記憶として胸の中に過去の自分と一緒にしまえたんだ。
……この上なく面倒な男だけど、あいつの心にも寄り添ってくれたら嬉しいな」

審神者「安心して。 彼以上に面倒でややこしい男を知っているから」

鯰尾「誰?」

審神者「貴方」








2022年01月23日

七年目之章 菖蒲からの手紙、3通目


鯰尾藤四郎からの手紙 3通目



審神者「…………」

鯰尾「……俺の手紙を読んだ時も、そんな顔してたの?」

審神者「さあね。 自分の顔なんて見えないからわからないです。
だけど……胸がキュゥッとなるこの感じは変わらない。
これで3度目なのにね……。
慣れて消えちゃう気配がまるでないや……」

鯰尾「元気出して」

審神者「元気だよ……」

骨喰「そうは見えない。 飯ぐらい食ったらどうだ」

鯰尾「え、食べてなかったの?」

審神者「菖蒲も食べてないような気がするから、なんとなく……ね」

鯰尾「大丈夫だよ。 あいつは今頃、刺身と天ぷら食ってるから」

審神者「ねーよ! このテンションで刺身と天ぷらはねーよッ!! 絶対に、ない!」

鯰尾「なんで見てもないのに絶対にないってわかるの?」

審神者「それがわかるのが心というものだ。
間違えもするけど、でも……心があるから証拠も何も無くても、それは絶対に違うと確信を持てることもある」

鯰尾「不思議だね」

審神者「……絶対じゃないとは思ってる。
鯰尾が言うように刺身と天ぷらを食べてる可能性だって冷静に考えれば色々出てくる。
せめてご飯だけでも美味しい物をとか、二振り目たちと何かの思い出があった料理とか、彼の意思じゃなくて彼を取り巻く周りの流れでそういう事になってしまった可能性とか……絶対にそれはないと確信を持ってそう思えるのに、絶対にないとは断じられない」

鯰尾「うん。 それでいいんだと思うよ。
絶対にこうだなんて、良くも悪くも決めつけたらその先には行けない。
どんな物事も、これで間違いないと思えることさえ、それ以外やそれ以上を考えることがきっと大事だから。
……ってことで、自分の体のことを考えてご飯を食べよう。
そしたらきっと胸のキュゥも落ち着くよ」

審神者「……ん」

骨喰「何が食べたい? 用意してやる」

鯰尾「本当に? じゃあ刺身と天ぷら」

骨喰「自分が食べたかったのか……」

鯰尾「えへへ」







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目次


審神者

 桜之姫

審神者:桜之姫
初期刀:歌仙兼定
初鍛刀:秋田藤四郎

本拠:山城国
就任日:2015年8月15日

説明

✿この記録と桜之本丸について✿
この物語は刀剣乱舞において一審神者である私の体験と主観に基づいた記録です。
記録をはじめた当初は刀剣乱舞への理解も浅く今となっては過去の自分に言いたいことが山ほどありますが、その積み重ねで今の私がある、私が刀剣乱舞と共に在った確かな時間を記したものとして過去の未熟な点も受け留めて頂けたら幸いです。
自己の記録として綴ってはおりますが、完全に刀剣乱舞と別物とは考えていません。
しかしそれは私の記録は真の刀剣乱舞の一部だと断じるものではありません。
星型が夜空に煌めく本物の星の形をしていなくても地上で星と認識されるように。
心がハートの形をしていなくてもハートは心と認識されるように。
星を見て星型を作るように、心を想いハートの形にするように。
刀剣たちが語ってくれる刀剣乱舞を見て感じて体験して想い、それを私なりに考え私の主観から見えるその情景を形にしたもの。
それが私の本丸記録です。
星型もハート型も「それは星じゃない」「それは本物の心じゃない」と言えるでしょう。
それと同じように私の記録も「それはあなたの本丸であって刀剣乱舞じゃない」というご指摘は真理です。
その真理を受け留めた上で「私の本丸は私の本丸だから私の好きに解釈して良い」という捉え方ではなく、「私の本丸に刀剣乱舞を求めたい」という願いで私はこの記録を綴っています。 この記録はそんな私の彼らへの私なりに真剣な想いを形にして綴っている記録です。
未熟な点も至らぬ点も、敬ってくれる彼らに甘えることも、窒息しない程度に緩くやっている部分もありますが、私が何より敬い尊重するのは刀剣男士と彼らが語ってくれる刀剣乱舞という物語。 彼らへの愛と忠誠を誓い、そんな彼らと共に在る私の日々を私の主観で記録します。

✿刀剣男士について✿
当本丸記録で描かれている刀剣男士は審神者である私が解釈し扱うことで刀剣乱舞という物語外の動きをします。 刀の心が光を当てなければ人の目には見えない月ならば、刀剣乱舞はそんな月に光を当てて目に見えるようにした三日月。
私が照らす彼らはその暗闇に光を当てた時の姿。
それは三日月ではないけれど、同じ月で、三日月(『刀剣乱舞』)の為に時に欠けることを許します。
言葉とニュアンスで伝えるのは難しいですが、月のように光の加減で見える姿形は変わるけれど、月のように人にどう見えようと姿形が変わることなどないもの、ぐらいの感覚で受け留めてください。
この記録で語られている刀剣男士は、当然人間である私の主観が彼らに光を当てていますのでそういう姿形で見えるように浮かび上がります。
しかし、私は刀剣乱舞が私とは違う人間が光を当てた三日月が語る物語ということを重んじて大事にすると同時に、人がどう光を当てようと月は月であるという前提を重んじています。
それは私の記録では私の光が生み出す闇に隠れて見えないけれど、常にそれがあるという仮定を前提として彼らを扱っています。
刀剣乱舞という月と三日月たちを大事にした上で、それを別物私の物と捉えずに、私はあくまでも彼らを借りた上で主として自由に心を読み考え扱うことを許された存在であり、彼らという存在を図書館で借りた本のように捉えています。
それは借りた私が自由に使えるけれど、大事にしなければならない大切な借り物。
教科書の偉人の顔に落書きをするように楽しければ何をしてもいいという扱いをしたり、この本は好きだけどこの一言が気に食わないと修正液で塗り潰してなかったことにしたり、塗り潰した上に別の一言を書くなんて以ての外です。
私も最初は審神者の先輩方のほとんどがそういう扱いをしていてそれが正しいとされていたから、審神者は刀剣男士をそういう風に扱うべきなのかと思っていた時期もありましたが……。
長年審神者をやりながら考え続けた結果、それはおかしいという個人的な結論に至りました。
彼らは私たちの物じゃない、けれど私たちの物として扱うことを許された物。
それは自由に使うことが許されていても、図書館の本のように敬意を込めて大切に尊重して扱わなければならない。
そういった心持ちで、私は私の物として刀剣乱舞という物語を借りている私に敬意を払ってくれる刀剣男士たちを私も敬意と感謝を込めて取り扱えるように心掛けています。
私は刀剣男士たちを刀剣乱舞という物語が伝えたがっている心を考える為に使いたい、そしてそれをより多くの人に伝えてリスペクトできるように私の内面だけで処理すればいいこの記録を見える形にして残しています。
刀剣乱舞をご存知ではないお客様におかれましては、今後、審神者として就任することがありましたら、私や誰かの刀剣男士や今現在正しいとされていることに囚われず、あなた様の目と心で真剣に目の前の彼らと向き合って刀剣男士を顕現させて頂けたら幸いです。

✿桜之本丸の独自アイテム✿
・霊鏡
出陣中、審神者と刀剣男士との通信機としての機能が主な役割。令和・平成の時代で審神者がスマホから連絡を入れる際もこの霊鏡に繋がる。 本丸に数枚しかない為、基本的に近侍と第一部隊長が必ず一枚所持。 基本は審神者部屋に一枚、手入部屋に一枚、鍛冶場に一枚置かれているが誰かが持ち出すこともある。 連絡以外にも、時の政府への情報の送受信や戦闘データを解析しての誉の算出、戦場での地図確認、部隊の結成や刀剣男士の状態確認からスクリーンショットの撮影まで幅広い機能が搭載されていおり、動作速度などの性能は本丸に接続する審神者のパソコン・スマホのスペックと連動している。 大切な道具なので不具合があれば運営とこんのすけがメンテで直したりする。

©2015 EXNOA LLC/Nitroplus

三振り目

藤薙
三振り目の骨喰藤四郎。
名の由来は藤四郎と彼に似合う藤の花、そして元薙刀の薙刀直しを合わせて「藤薙(ふじなぎ)」。 グランブルーファンタジー~蒼天のえにし~で審神者が獲得した骨喰藤四郎の心を本丸で鍛刀した骨喰の依代を使い顕現させている。 顕現したばかりの頃、一振り目の骨喰に世話になった縁で彼とは仲良し。 憧れと尊敬の念を抱く一方で悪いところは自分の反面教師にしている。 その為か一振り目よりも精神的に大人で安定している面が目立つ。 しかし、それは一振り目がいてくれるからこそであり、自分が特別強いわけでも一振り目より優位だとも感じていない。 良い面も悪い面も、全部を含めて骨喰のことを理解し、同じ骨喰藤四郎だからこそ他者では理解できない部分まで正確に彼の心を把握している、そしてそれは自分に対する理解にも繋がり、それが己の弱さと戦う力になっている。 だからこそ彼は他の誰よりも、自分の弱さに呑まれそうな一振り目の骨喰藤四郎に幸せになってほしいと願っている。

紫電
三振り目の鯰尾藤四郎。
名の由来は「紫電一閃」「紫電清霜」という意味を込めて「紫電(しでん)」。 悩んだ末に引換所で交換した。初期刀以外で審神者がはじめて、そして唯一自分の意志で選び、手に入れた刀。 自身に宿るその意味を大事に、選ばれた刀として審神者を助けたいが、審神者が求める鯰尾藤四郎が自分ではなく一振り目だという矛盾に苦心している。 修行の果てに豊臣秀頼の自刃に使われたとされる説を自身の記憶として取り戻した。 極になっても気心知れない者に対しては相変わらず敬語と敬称を使って接し中々心を開かない。明るさの裏側で悩みも多いようだが、自分の今を精一杯生きるため日々頑張っている。同じ日に顕現した静形は彼の一番の仲良し。


二振り目

宗近
二振り目の三日月宗近。
蛍丸捜索時代に厚樫山で発見。
鶴永、国重と共に長い間、保管されていた。
二度刀解されたが、三度本丸に訪れたことにより顕現を許された

鶴永
二振り目の鶴丸国永。
蛍丸捜索時代に厚樫山で宗近のすぐ後に発見。
宗近、国重と共に長い間、保管されていた。

国重
二振り目のへし切長谷部。
名の由来は刀工の長谷部国重。
池田屋一階の最初のマスで入手したことにより、刀解されずに宗近、鶴永と共に保管されたていた。

骨噛
二振り目の骨喰藤四郎。
名の由来は骨喰の別名、骨噛み。
菖蒲と共に鍛刀された。

菖蒲
二振り目の鯰尾藤四郎。
名の由来は鯰尾造と似た菖蒲造。
骨噛と共に鍛刀された。

阿蘇蛍
二振り目の蛍丸。
名の由来は蛍丸があったと言われる阿蘇神社。
宗近(三度目)と共に厚樫山で発見。


映像記録

✿映像之記録✿

本丸での活動記録など
youtubeにて動画公開中。

舞桜

      翻译: