審神者「ごめん、太鼓鐘。ちょっと待ってね」
太鼓鐘「え?あぁ、鍛刀?いいぜ、待ってるから先やってこいよ」
審神者「ありがと、ごめんね…。
ちょっとだけ待っててね」
3時間後 鍛刀部屋
燭台切「主!貞ちゃんのこと一体何時間待たせるつもりなんだい?!」
長谷部「静かにしろ光忠。主は鍛刀中だ」
燭台切「長谷部くん…君もいたのか……。
って、何だい、この荒れ果てた鍛刀部屋は?!」
岩融「先程、長谷部のやつが富士に向かって刀をふりまわしてな」
燭台切「は?刀を…こんな狭いところで…?」
梅:ひょこひょこ(訳:良い感じだよー)
岩融「おお!よくぞやったな、梅。
ほれ、主、待ち望んだ5時間だぞ」
審神者「もういい…もういいの…。
薙刀は岩融しかいないの…岩融がいればそれでいいの……」
岩融「嬉しくもあるが、そのようなことを言うでない。
きっと次こそは巴形が…………」
岩融
岩融「次こそは巴形が来るはずだ」
燭台切「……………」
長谷部「光忠、あそこを見てみろ」
燭台切「…え?」
長谷部「これで八振り目の岩融だ」
太鼓鐘「あぁーもうっ!主もみっちゃんも、どーして戻って来ないんだよ?!」
バンッ!!
太鼓鐘「主!みっちゃん!
一体俺をいつまで待たせるつもりだい?!
待ちくたびれたぜ…!!」
燭台切「ぁ…ごめん、貞ちゃん。
つい夢中になっちゃって……」
太鼓鐘「なんだよみっちゃんまで…酷ぇなぁ…」
岩融「そうむくれるな。
光忠はお前の為に鍛刀補助を代ったんだ」
燭台切「結局、新しい刀剣男士を呼ぶことはできなかったけどね。
……役に立てなくてごめん」
太鼓鐘「薙刀のやつまだ顕現してねーの?
ったく、しゃーねーなー。俺の力を貸してやるよ。んで、主は?」
長谷部「あちらだ」
審神者「私が鳥嫌いだから来てくれないのかな?
空気読んでくれてるのかな……鳥嫌い克服しなきゃ顕現してくれないのかな……」
太鼓鐘「おーい、主!しっかりしろって(←バシッと審神者の背を叩く太鼓鐘)」
審神者「…!?た、太鼓鐘?
ご、ごめん、待たせたよね?」
太鼓鐘「ああ、かなり。待ちくたびれて錆びそうだったぜ…」
審神者「ごめんね!!手入部屋入る?(←涙目で手伝い札を取り出す審神者)」
太鼓鐘「冗談だから本気にするなって(苦笑)
鍛刀、俺も手伝うよ。残りの資源と札はどんな感じだい?」
岩融「資源はざっと数えて木炭3万玉鋼28万冷却材2万砥石2万といったところだ」
太鼓鐘「は?マジかよ!?
玉鋼がついに40万に届くって遠征部隊のやつら喜んでたのに……。
他の資源だってもうすぐ10万だったろう?
あぁ…こりゃあ酷い資源被害だ……」
長谷部「札の残数は松竹梅が各1枚、富士札が5枚。
手伝い札と依頼札はまだまだ余裕があるから気にしなくていい」
太鼓鐘「なるほな…状況は把握した。
みっちゃん、ここからは俺が代わる。
新しい薙刀を鍛刀して、気分よく修行に行ってやるぜ!」
審神者「……………。
太鼓鐘、岩融十振り。
もしも十振りになったら、そこで鍛刀をやめて貴方を修行に出す」
太鼓鐘「え?いいの?俺の方を優先してさ」
審神者「優先どころか、こんなに後回しにしてごめんねって感じだよ。
これで来なかったら巴形薙刀は今回は諦める。
…貴方の修行の方が今は大事。
暫く会えなくなるんだし、鍛刀できなくても怒らないから。
最後に一緒に
岩融作ろう、太鼓鐘(達観した笑顔)」
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太鼓鐘「よいしょっと!
んー…鍛刀ってあんまりしたことないけど…中々難しいな……。
こういうのは勢いで……おーい、竹!一気にいくぞー!!」
竹:パタパタ!(い、一気に!?)
太鼓鐘「主も、資源と手伝い札ガンガンで頼むぜー!
せーーーーのぉっ!!!せりゃせりゃせりゃー!」
審神者「ちょ、太鼓鐘、ペース早いって!
もうー、主はちょっとお疲れなんだよー!?」
岩融「と言いつつも合わせられる辺りが主だな」
長谷部「あまりご無理をされなければ良いのだが…」
燭台切「…ん?あの感じは…」
5:00
竹:ドヤ!
長谷部「どや顔をするのは早いぞ。
主、手伝い札です、お受け取り下さい」
審神者「ありがと、長谷部。
さあ、いでよ、岩融…!
……でも、できれば…巴形薙刀っ!!」
(舞い散る桜と共に、彼は鍛刀部屋へ降り立った)
審神者「……へ?」
岩融「おお、ようやく来たか、我が同種!!」
長谷部「お見事です、さすがは俺達の主。
太鼓鐘もお手柄だったな。
よくぞ巴形薙刀に主の心を届けた」
燭台切「すごいよ、貞ちゃん、お手柄だね。
………って、なんで君は後退してるの?
ほら、初対面でしょ?
主なんだから、ちゃんと前へ出て自己紹介をする!」
審神者「(羽!?羽!!羽!?羽!!すごく羽ぇっ!!!)」
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本丸 門の前
太鼓鐘「んじゃ、無事に務めも果たしたし…。
太鼓鐘貞宗、今より更に格好良くなる為、修行に行ってくるぜ!」
審神者「道中、気をつけてね」
太鼓鐘「ああ、主こそ。
みんながいるから大丈夫だとは思うが…。
あんまり無理や無茶はするなよ。
あんたを心配してるやつ、大勢いるんだからさ。
みっちゃん、俺のいないあいだ、主のことをよろしく頼む」
燭台切「オーケー。この子のことは僕に任せて。
貞ちゃんは安心して自分の修行をしておいで。
カッコイイ新衣装を期待して待っているよ」
太鼓鐘「ふっふっふ、乞うご期待ってね!
俺の方は帰ってきたら美味い飯を期待してるぜ、みっちゃん」
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太鼓鐘を見送り、燭台切と別れた審神者は部屋へ戻った。
審神者「……………待たせた?」
巴形「主を待つのも仕事のうちだ。
俺と主を繋いだあの者は……?」
審神者「ついさっき修行に行った」
審神者「………?」
巴形「いや…なんでもない…」
審神者「………巴形って、どんな薙刀なの?」
巴形「どんな…とは?」
審神者「えぇっと、自己紹介!
……してくれる?」
巴形「…………」
審神者「…ごめん、無理にとは言わない」
巴形「主の命には従おう」
審神者「いや、命令じゃないからホント無理しないで?」
巴形「無理はしない。己の語れることを語るだけだ。
薙刀、巴形だ。
馬上用とも、小柄な者が扱うための形とも言われるが、もっぱら祭典用とされるな」
審神者「………?」
巴形「すまない。
主が期待する自己紹介がこれではないことはわかっている。
だが…俺には語れる過去が何もないんだ」
審神者「えっと……?
……あ、そういえば、巴形は同じ薙刀の集合体なんだっけ?」
巴形「その通りだ。
故に、俺には銘も物語もない。
名のあるここの刀達と違い、語れる過去が何もない。
それはつまり、現世での存在が定かではないということだ。
………意味がわかるか?」
審神者「物語と歴史が貴方達、刀剣男士を形作っている。
それがない貴方は一貫した明確な心がない、あるいはすごく薄くてそこにあるけど透明でそれを視るのは難しい。
薙刀として各所に存在してはいるけれど、どれも貴方であって貴方ではない。
歴史の中に明確な主というものが存在しないから、人との繋がりが希薄で他の刀と比べて現世から遠いって感じかな?」
巴形「……驚いた。
人間にしては理解が早い」
審神者「まあね、物の心を視るのは私の数少ない特技だから。
だけどよく間違えるし、絶対正しく読み解けている自信なんてないから、たまにちょっと不安になるけどね。
これが本当に…この子の心なのかな、私が歪めちゃってるだけなんじゃないのかなーってさ」
巴形「そうか…。
しかし、その心配は俺には無用だ」
審神者「どうして?」
巴形「先程も述べた通り、俺には物語がない。
間違えようにもはじめから本当の心などないのだ。
だから、俺のことは気兼ねなく使え」
審神者「……そっか。
じゃあ、貴方は私の巴形薙刀なんだね」
巴形「ああ、俺は主の巴形薙刀。
………他の誰の物でもない」
審神者「…………………。
よし、じゃあさ、巴形、これから一緒に作ろうよ」
巴形「………作る?鍛刀の命令か?」
審神者「違う違う、鍛刀はもうお腹いっぱい(笑)」
巴形「では何を作る?
主の命であれば何でも作ろう」
審神者「物語」
巴形「物…語…?」
審神者「うん。私と一緒に貴方のこれからの物語を作っていこう。
私、主としてずっと貴方の傍にいるから、貴方も刀剣男士として自分の物語を作って。
それが私から貴方への最初の主命。
…ここは皆の本丸で、そして貴方の本丸。
貴方という存在の明確な居場所。
だからさ、自分がいないって思わないでね。
うぅん、思ったっていい。
その時は私が何度だって「巴形はここにいるよ」って貴方に言うから」
巴形「(ここが…俺の…居場所……。
俺の本丸…俺の物語……この人が…俺の……)」
審神者「心配しなくても大丈夫。
私は貴方の主として、貴方を存在させ続ける。
貴方がここにいてくれるのなら、どんなに小さな心の声だって聴くし、希薄な心も視て、そして読み解いてみせるよ。
だから、貴方は巴形薙刀として今も、そしてこれからもここにいる。
主の私がそれを認めるよ」
巴形「……ありがとう。
会って間もない俺を認めてくれて。
この身、この刃、この心、これよりすべて我が主に捧げよう」
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審神者「こちらこそありがとう。
そういうこと言ってくれる子、私は好き。
……だけどね、巴形…ひとつ、申し訳ないけど、お願いが…」
巴形「なんだ?申してみよ」
審神者「……あのね、私、鳥が怖いの」
巴形「は?鳥?」
審神者「(こくこく)貴方の服の
それ、すごく怖いの。
だからね、私と接する時は今のこの距離を守って。
ちょっと…これ以上近づくのは本当に怖いんだ……」
巴形「あぁ…だから、呼ばれながらも拒絶されていたのか……」
審神者「拒絶してた?やっぱり貴方が中々顕現してくれなかったの私のせいだった?!
ごめんね……あの、でも、誤解しないで、私が怖いのは鳥であって、貴方ではないから。
少しだけど、こうして一緒に話して貴方のこと好きだなって思った。
だから、私は巴形と仲良くなりたいし、これからもっと使いたい。
怖がっちゃうこともあるかもしれないけど……。
私が貴方を必要としていることは、いつも忘れないでいてね」
巴形「承知した。
主、用があれば俺を呼べ。
声の届くところに控えていよう」
審神者「ありがとう。
そう言ってもらえると、すごく嬉しい。
…じゃあ、早速だけど、一緒に戦力拡充に行こうか。
まだ1Lvだけど…大丈夫、私の短刀達がきっと上手くフォローしてくれるから。
みんなとも仲良くなって、早くここに馴染んでね。
困ったことがあったら相談に乗るよ。
私がいない時は同じ刀種の岩融とか…初期刀の歌仙とか。
鯰尾って子もすごく世話焼きだしきっと力になってくれる。
癖のある子も多いけど、なんだかんだみんな良い子だから、困った時は頼ってね。
…あ、私の話長いね…ごめん、じゃあ、今度こそ行こう、戦力拡充!
巴形、ついてきて、本丸案内がてら極の子達を呼びに行くよ」
巴形「はっ、お供致します」
その後、戦力拡充にて
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愛染「うりゃっ!がんがん攻めるぜー!」
博多「主が鍛刀で吹っ飛ばした資源、どげんかせんといかんね…」
後藤「博多ぁー!今は資源よりも戦に集中しろ!」
博多「おっと…すまん、後藤兄!商売上手切り…!」
平野「片付きましたね。
巴形さん、体は現世に慣れてきましたか?」
巴形「ああ、先程よりも体が動く…少しばかりだが、重みを得た」
後藤「重み?」
巴形「だが…まだ足りない……。
俺にはもっと物語が必要だ」
平野「巴形薙刀さん…何やら変わったお方ですね…」
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巴形「…………」
村正「huhuhu、何かお悩みデスか?」
巴形「お前は……」
村正「千子村正。以後、お見知りおきを」
巴形「村正…あぁ、妖刀で有名なあの村正か…」
村正「そう、妖刀とか呼ばれているあの村正デス、huhuhuhu。
けれど、ワタシの伝説に惑わされないでください。
こう見えてワタシもここに来たのがほんの数ヶ月前なので、はじめての後輩に世話を焼きに来ただけデスから。
そういう事なので、遠慮せずにさらけ出してください、何から何まで…ね?huhuhuhu」
巴形「……そうか、すまない。
実を言うと…主がこの羽に怯えていてな」
村正「ああ、なるほど、我らが主は妖刀よりも鳥に怯える人間デスからね、huhuhuhu」
巴形「声の届く位置にいつも控えている。
……が、できることならば…近づいてみたい」
村正「なんだ。簡単な話ではありませんか」
巴形「簡単…か…?」
村正「えぇ、簡単デス。
要するに…脱げばいいんデスよ」
ドスッ
村正「うぐっ…my family……。
槍の柄で殴るのが、アナタの挨拶なのデスか…?」
蜻蛉切「そうだな、村正。
お前への挨拶はこれになることが多いかもしれん。
………巴形に何を吹き込んでいるんだ」
村正「はじめての後輩に、先輩としてアドバイスを…」
蜻蛉切「要らんアドバイスをしなくていい!
まったく、これだから皆に誤解されるんだぞ………。
申し訳ない、こいつの言ったことはあまり気にしないでやってくれ」
巴形「いや…参考になった。
ありがとう、村正」
蜻蛉切「なっ?!」
村正「huhuhuhu、どういたしまして」
蜻蛉切「待て、巴形…!
村正の言ったことを真に受けるな…!」
村正「良き結果を祈ります。
…なんて、妖刀のワタシが言うのはおかしいでしょうか、huhuhu」
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審神者「ただいまぁ…って、あれ?」
巴形「おかえり。帰りを待っていたい」
審神者「巴形…その服……」
巴形「昨日支給された内番服を着てみた。
これならば怖くはないか…?」
審神者「……うん!
大丈夫、怖くない」
(安心したように微笑むと巴形は一歩二歩と近づいて、ゆっくり審神者に手を伸ばした)
巴形「ようやく触れることができた。
ずっと触れてみたかった」
審神者「私に触ってもご利益とか何もないよ?」
巴形「いいや、ある。
俺の主が今ここにいるという確かな実感を得られた。
この服の時は、時々こうして触れてもいいか?」
審神者「…あんまり触れたいとか言われないんだけど……。
でも、どーぞ、巴形がそれを望むなら。
代わりに、私にも巴形にべたべたさせてね?」
巴形「わかった。存分に来い。
……主の隣を歩いてもいいだろうか?」
審神者「うん、勿論。おいで、巴形」
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