第12回「物言う株主」は本当に悪か 先細る日本企業「変わるチャンスに」
企業が上場している限り、アクティビスト(物言う株主)にいつ狙われてもおかしくない。かつて悪玉のイメージが強かったアクティビストは、企業にとって救世主にもなりうるのか。企業法務に精通したベテラン弁護士の中村直人氏(64)に聞いた。
――アクティビストの存在がすっかり産業界に定着しました。
「つい最近まで、アクティビストに対して企業や経済界からは一種の『悪』であり、迷惑な存在だという否定的な評価がありました」
「高額配当を求めたり、プレミアムを付けた自己株のTOB(株式公開買い付け)を要求したり、一時的な株主還元で利益を得て株を手放すことも多くありました。ところが今は長期的な視点で経営を見る建設的なアクティビストも出てきています。いろいろなタイプが増えました」
――株主総会でも株主提案が目立つようになりました。
「今の日本の経済は生産性が低く、このままでは先細りです。株主が会社に提供した資本のコストすら稼げず、採算割れで赤字の商売を続けている企業が多すぎます。赤字事業をやめようにも社内の反発が強く、なかなかできません」
「脱炭素や生成AIの登場など大きな環境変化に直面し、事業の大胆な入れ替えを必要とする時期なのに、経営者の尻をたたく存在がいないのです。アクティビストと向き合うことで、日本企業が変わるチャンスになると期待したいですね」
――経営者の意識も変わるべきだと。
「日本企業は労働生産性が欧米に比べて低く、これでは労働者の賃金は上がりません。もうからない商売をやっていたら労働生産性は低いままです。労働者のためにも生産性を上げなければいけません」
米国では会社イコール株主、日本は……
「取締役の報酬がいま急激に…
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