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2022年9月22日木曜日

by the skin of one’s teeth

ウクライナの戦争で、ロシア側の捕虜になっていたイギリス人の兵士らが釈放されました。捕虜交換によるもののようです。


A Briton who was threatened with execution after being captured by Russian forces during the siege of Mariupol has been released alongside four other Britons and five international prisoners after the intervention of Saudi Arabia.

Aiden Aslin and “the other British prisoners of war held captive by the Russian authorities” were already on their way back to the UK, said Aslin’s MP, Robert Jenrick, after being flown from Russia to Saudi Arabia.

(中略)

“We just want to let everybody know we are out of the danger zone,” Aslin said in a video filmed on a plane with Pinner beside him. “By the skin of our teeth,” Pinner added, and both men thanked those who had supported them during their detention.
(Dan Sabbagh. Aiden Aslin among 10 international ‘prisoners of war’ released by Russian authorities. The Guardian. September 21, 2022.)


釈放された英兵のコメントが引用されていますが、


By the skin of our teeth


とあります。

これは、命からがら、という意味で、辛うじて死刑を免れたという英兵の心境を語っています。

それにしても、変わったフレーズです。歯(tooth)に皮膚(skin)はありませんから。

研究社の新英和大辞典によると、この表現は旧約聖書ヨブ記に由来するとあります。

富豪であったヨブがサタンのために様々な苦難に苛まれる話ですが、ヨブ自身がそのことを語る19章にこの表現が出てきます。該当箇所を引用します。


骨は皮膚と肉とにすがりつき
皮膚と歯ばかりになって
わたしは生き延びている。
(新共同訳)


2行目の「皮膚と歯ばかりになって」というところが該当すると思われます。

つまり、皮膚(skin)と歯(teeth)で、歯の皮膚(skin of teeth)とはなっていません。

この「皮膚と歯ばかりになって」という部分は、英語では、


And I have escaped by the skin of my teeth.
(King James Version)


となっています。

研究社新英和では、原語の意味は不詳、とお茶を濁したような解説に留まっていますが、恐らくは聖書の原語(ヘブライ語)を逐語訳すると"skin of teeth"となってしまうのだろうと思われます。

残念ながら、ヘブライ語の知識がありませんのでこれ以上は分からず、話はこれで終しまいです。


2016年5月24日火曜日

grow teeth

フィットビット(Fitbit)というウェアラブル端末をご存知でしょうか?腕時計のように手に装着し、血圧や心拍数などを記録することができる、近頃流行りのデバイスのようです。

私は使ったことも無く、また買おうとも思いませんが、その理由としてはこうしたデバイスにあまり信頼を置いていないというのがあります。GPSウォッチなんかもそうですが、その手のデバイスが計測してくれる距離や血圧って本当に正確なの?と思うわけです。

訴訟社会と言われるアメリカでは、正確でない測定には物申す、ということでしょうか、製造販売元に対する集団訴訟が起きているそうです。


A class action lawsuit against Fitbit may have grown teeth following the release of a new study which claims the company's popular heart rate trackers are "highly inaccurate."

Researchers at the California State Polytechnic University, Pomona tested the heart rates of 43 healthy adults with Fitbit's PurePulse heart rate monitors, using the company's Surge watches and Charge HR bands on each wrist.

Subjects were then hooked up to a BioHarness device that produced an electrocardiogram (ECG), to record the heart's rhythm against the data being produced by Fitbit's devices.

Comparative results from rest and exercise, including jump rope, treadmills, outdoor jogging and stair climbing, showed that the Fitbit devices miscalculated heart rates by up to 20 beats per minute on average during more intensive workouts.
(Kalyeena Makortoff. Study claims Fitbit trackers are 'highly inaccurate.' CNBC. May 24, 2016.)


記事によりますと、調査の結果、Fitbitで計測される心拍数は実測値と平均20程度の差異が認められたということです。

さて、引用した上記の部分の冒頭に出てくる、


have grown teeth


という表現が引っかかりました。

主語は"a class action lawsuit"ですから、「集団訴訟がその攻勢を強めている」というくらいの解釈になるのだろうと思いますが、果たしてそのような意味で用いられる成句なのかと思って辞書を引いてみましたが、それらしき表現が見当たりませんでした。

コーパスなどでも用例は見当たらず、特殊な用法のようにも思われますが、「歯、牙」(tooth)は日本語でも実効性や勢いを殺がれた状態を表現するのに「牙を抜かれた」と言うように、単なる体の一部を指す名詞以外の意味を持っています。

Merriam-Webster Dictionaryによれば、複数形としての"teeth"の意味として、


the power that makes something effective


という説明を挙げています。

"grow teeth"は単にこの意味での"teeth"を目的語に据えた表現なのかも知れませんが、用法として気になるところです。


2015年12月11日金曜日

頑張ってます! ― sink one's teeth into

イスラエルのネタニヤフ首相の飼い犬が話題になっているニュースです。


JERUSALEM – Prime Minister Benjamin Netanyahu’s recently adopted dog Kaiya has sunk her teeth into her new position, biting two visitors at an event on Wednesday, including the husband of the deputy foreign minister.

At a candle-lighting ceremony to mark the Jewish festival of Hannukah, the 10-year-old mixed breed also took a snip at a member of parliament from Netanyahu’s Likud party.

Knesset Member Sharren Haskel, a veterinary nurse, dismissed the incident, telling Army Radio it was “trivial”.
(Benjamin Netanyahu’s dog keeps biting people. New York Post. December 10, 2015.)


首相の息子が動物保護施設から譲り受けた成犬だそうですが、いわゆる「噛み癖」があるらしく、首相を訪問する各国要人に「噛み付いて」いるそうです。

さて、"sunk her teeth into her new position"という表現が出てきますね。

"sink one's teeth into"というのは成句の表現で、Collins Cobuild Dictionary of Idiomsの定義では下記のようになっています。


If you get your teeth into something or sink your teeth into it, you become deeply involved with it and do it with a lot of energy and enthusiasm.


一国の指導者である首相に飼われることになれば、犬と言えどもそれなりの役割があるということでしょうか。各国の要人に対してもそれなりの振る舞いが要求されるのでしょうか。「噛み付く」などは論外なのかも知れませんが、そこはご愛嬌、噛み付くのも話題になるということで、飼い犬としての役割を立派に果たしているという見方もできるようです。

この記事で、"sink one's teeth into"が、実際の「噛み付き」の行為とかけたしゃれであることは言うまでもありません。


2014年6月27日金曜日

ウルグアイ・スアレス選手は本当に噛み付いたのか ― sink one's teeth into

ワールドカップ1次リーグのウルグアイ対イタリア戦で、ウルグアイの主力選手であるスアレス選手が試合中、対戦相手であるイタリアのディフェンダー、キエッリーニ選手の肩に噛み付いたと報じられています。

その場ではイエローカード(警告)やレッドカード(退場)を宣告されることはなかったようですが、抗議を受け、FIFAがスアレス選手の出場停止処分を下したようです。

下記の引用はまだ処分が決定する前のものです。


The Uruguayan Football Association has gone on the offensive in an effort to save Luis Suárez from a lengthy ban for biting Giorgio Chiellini, claiming he is the victim of a smear campaign by the Italians, the English media and the Brazilian hosts.

As Suárez came under pressure from his sponsors, fellow professionals and Fifa's disciplinary committee after sinking his teeth into Chiellini’s shoulder, the Uruguayan FA attempted to circle the wagons.
(Uruguayan FA defends Luis Suárez, claiming bite marks are Photoshopped. The Guardian. June 25, 2014.)


どうやらウルグアイ側にはこの噛み付き事件をでっち上げ、ウルグアイに対するネガティヴキャンペーンの一種であるという見方があるらしく、大統領までが出てきてスアレス選手擁護に回っているようです。

さて、今日の表現は、


sink one's teeth into~


というものです。"bite"(噛む)という表現も使われていますが、敢えて"sink one's teeth"と表現しているところに、面白さを感じます。単純に“噛む(咬む)”というよりも、“かぶりつく”という感じでしょうか。

"sink one's teeth"は成句でもあり、“深く関わる、巻き込まれる”というような意味もあります。ここでは噛み付いてしまったために処分されるかもしれない事態に巻き込まれてしまった、というような意味合いも込められているのかも知れません。

この噛み付き事件については邦紙ではあまり大きく取り上げられていないようですが、海外メディアではトップ記事の扱いです。

上に引用した記事はイギリスのガーディアン紙のものですが、スアレス選手はプレミアリーグのLiverpoolの選手でもあり、何かとイギリスのメディアとは悶着がある模様です。一方、ウルグアイのメディアは今回の件では(イギリスメディアに対して)対抗姿勢を取っているようで、サッカーが外交問題にまで発展しそうな気配があります。

ところで、スアレス選手は本当にキエッリーニ選手の肩に噛み付いたのでしょうか?

こちらのサイトでは一部始終の写真が掲載されていますが、これを見ると客観的には噛んだっぽいな、と思わせられます。また、“前科”もあるということで、いくら大統領のサポートがあるとは言え、処分が覆る見通しは低いのではないかと思われます。


2013年6月3日月曜日

おやしらず ― wisdom tooth

歯医者さんに積極的に行く、喜んで訪問するという人はそういないと思います。私もできれば近寄りたくないといいますか、行かなくて済むものならそうしたいところです。

ところが先月、奥歯の詰め物が外れてしまい、仕方なく近所の歯科を受診する羽目になってしまいました。詰め物が外れても時間を置かずにすぐに処置してもらえれば1回で済むと思ったのですぐに行きました。

外れてしまった詰め物は5分足らずでまた元通りにしてもらえました。ところが、歯石が酷い(!)と言われ、色々と掃除をされ(それはそれでありがたいことなのですが)、さらには虫歯を発見したと言われ、2回目、3回目と通わざるを得なくなってしまいました。

そして、衝撃だったのが、「おやしらずがありますね~、抜いたほうがいいですよ」、というものでした。

おやしらず、という言葉は知っていたのですが、まさか40歳にもなってこんなことを言われるとは思ってもいなかったのです。おやしらずの抜歯はとりあえず虫歯の処置が終わってから、と言われたので、その日帰宅してからネットで色々調べたのですが、とにかく痛いという情報ばかりが目につき、うんざりとします。

おやしらずのことを英語で、"wisdom tooth"と言います。


For decades, having wisdom teeth removed was a rite of passage – one many high school graduates squeezed in before leaving for college.

The thinking was that it was best to lose those mostly useless, ill-fitting teeth before they caused infections or other trouble. Wisdom teeth, also known as third molars, often are misaligned and impacted – fully or partly stuck below the gum line – because they emerge late, at ages 17 to 25, after the jaw has stopped growing and other teeth have filled the mouth.

"Historically, oral surgeons have had the view that it's better to take them out, better to be safe than sorry," says Richard Niederman, director of the Center for Evidence-Based Dentistry at the Forsyth Institute, Cambridge, Mass.
(Kim Painter. Wisdom teeth: Should they stay or go? USA Today. June 2, 2013.)


日本語で“おやしらず”と英語では"wisdom tooth"(知恵の歯)とは、ずいぶん違う表現のようですが、これらの表現の由来は似たようなところにあるようです。

歯科学用語では第3臼歯(third molar)と呼ばれますが、この歯が姿を見せ始めるのは人間が成長してから、大体17~25歳くらいになってからということから、親がその生え始めを知ることがない歯、ということで“おやしらず”と言われるようになったそうです。"wisdom tooth"の"wisdom"とは知恵、分別のこと、つまり分別がつくような年齢になってから生え始める歯ということです。ラテン語では、dens sapientiaといいますが、sapientiaとは英語の"sapience"であり、“分別”のことです。

さて、引用記事でも議論されていますが、おやしらず(wisdom tooth)を抜いたほうがいいのか、抜かずに放って(温存して)おいてもいいのかについては議論があるそうです。抜かないことのリスクは後々ややこしいトラブルになるということですが、何の悪さもしていないおやしらずを抜くことも推奨されないという見方もあるそうです。

小生も、おやしらずは歯磨きでうまく磨けない部分を作るから、歯周病や他の歯の虫歯を引き起こしやすいので抜いたほうがいいですよ、というアドバイスを受けました。

で、結局どうなったかというと、虫歯の処置が終わってからその歯医者さんに行っていません・・・。抜くのが怖いので・・・。


2013年1月16日水曜日

B787の相次ぐトラブルは“初期不良”? ― teething problem

ボーイング787型機が相次ぐトラブルに見舞われており、全日空や日本航空などが当面運航を中止する旨発表したことがニュースになっています。

本日も山口宇部空港発羽田行きの同型機で機内に煙が充満するなどしたため、高松空港に緊急着陸するという事態になったようです。


TOKYO (AP) — Boeing Co.'s 787 planes were grounded for safety checks Wednesday by two major Japanese airlines after one was forced to make an emergency landing in the latest blow for the new jet.

All Nippon Airways said a cockpit message showed battery problems and a burning smell were detected in the cockpit and the cabin, forcing the 787 on a domestic flight to land at Takamatsu airport in western Japan.
(Emergency landing grounds Boeing 787 jets in Japan. USA Today. January 16, 2013.)


記事の中で、いわゆる航空評論家が意見を述べている箇所が以下です。


The earliest manufactured jets of any new aircraft usually have problems and airlines run higher risks in flying them first, said Brendan Sobie, Singapore-based chief analyst at CAPA-Center for Aviation. Since about half the 787 fleet is in Japan, more problems are cropping up there.

"There are always teething problems with new aircraft and airlines often are reluctant to be the launch customer of any new airplanes," Sobie said. "We saw it with other airplane types, like the A380 but the issues with the A380 were different," he said.
(ibid.)


上記の第2段落冒頭にある、"teething problem(s)"という表現を今日は取り上げたいと思います。

"teething"とは、"teeth"("tooth"の複数形)の動詞形"teethe"のことで、歯が生えてくること、を意味しています。つまり、歯が生えてくる際の(色々な)問題、ということですが、これは赤ちゃんに歯が生えてくる際にむずがったり、食事を嫌がったり、といった色々なややこしい問題のことを言っているものです。

このことから、新しいプロセスが始まる際に典型的に見られるような不具合のことを、"teething problem"(あるいは、teething trouble)と呼ぶようになりました。

日本語の表現はいろいろあるかと思いますが、“初期不良”という表現が近いように思います。(何だかパソコンの初期不良みたいな感じで、人を乗せる航空機と同じレベルではありませんが・・・。)

国内メディアの記事などを読んでみますと、やはり日本の航空評論家の人がコメントしていますが、“初期故障”と言っています。

記事などによりますと、問題となっているボーイング787は日本が世界に先駆けて導入したようですが、新型機というものは"teething problems"がつきものであり、避けられがちだということです。


 
  翻译: