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2012年7月20日金曜日

海の日特集(5) ― boil the ocean

海の日特集は本日が最終です。

今日取り上げる表現は、"boil the ocean"というフレーズ(成句)なのですが、ご存知でしょうか?たぶん辞書には載っていないと思います。

さっそく使用実例を。


Aussie marketers know they need to do better here but many aren't getting started because they think they have to come up with a huge company-changing strategy. My advice is to not try to boil the ocean but start by looking at what data you have, and seeing if you can use it to inform your marketing better.
(Nick Leeder, Managing director, Google Australia and New Zealand. The Australian. July 2, 2012.)


"boil the ocean"の意味が何となく掴めますか?

文字通り訳すならば、海洋(the ocean)を沸騰させる(boil)、ということになりますが、イメージがわきますか?わきませんよね?そうです、それが"boil the ocean"の意味するところで、海洋の水を沸騰させるなどという、現実的に不可能で、とても海のものとも山のものともわからないようなことを考えたり、計画することを意味しています。

一般的な英和辞典、英語辞典に載っていない表現なのですが、ネット辞書では取り上げているようでしたのでその定義を引用します。


To attempt something that is way too ambitious, effectively impossible. An idea too broad in scope to accomplish.
(Urban Dictionary. urbandictionary.comのサイトから)


分かりやすい、明快な定義だと思います。

さて、この"boil the ocean"という表現ですが、ビジネスで使われることが多い(というか、ビジネスマンが好む?表現)ようです。

上記の定義で引用したUrban Dictionaryの補足説明によれば、


Jargon often used by self-important corporate middle managers prone to bloating their speech with meaningless and unnecessary buzz-words.


ということですから、"boil the ocean"という表現は実は勿体ぶった表現と捉えられる面があると考えた方がよさそうです。下記の記事もこの表現に対して否定的です。


"Boil the Ocean." Why not just say "waste time," which is essentially what this phrase means? But no, the point is made much better if it sounds like something a creepy James Bond villain would do.
(Maryam K. Ansari. 5 of the Creepiest Business Cliches. Reuters. June 20, 2012.)


この引用記事のタイトル、"5 of the Creepiest Business Cliches"からもお分かりのように、ビジネスマンが使う勿体ぶった表現を取り上げている記事で面白いのですが、"boil the ocean"が辞書に載らないのにもそのあたりに理由があるのでしょうか!?

これで7月16日月曜日から5日間に渡りました海の日特集を終わります。偶然ですが、実は今日7月20日が元々の海の日でした。(改正祝日法による、いわゆるハッピーマンデーで今年は7月16日でしたが、改正以前は7月20日が海の日でした。)

それではよい週末を!


2012年7月19日木曜日

海の日特集(4) ― in the offing

海の日特集、4日目の今日は、"in the offing"という成句を取り上げます。

まず、"offing"の意味からですが、"offing"は名詞で、日本語では“沖、沖合い”を意味します。もちろん、副詞の"off"から来ています。副詞の"off"にも“(陸地から離れて)沖に”という意味があります。

American Heritage Dictionaryの定義がわかりやすいので、引用します。


The part of the sea visible from shore that is very distant or beyond anchoring ground.


訳すと、“陸から見えるけれども、陸からは大分離れている海上、もしくは錨を下して停泊する浅瀬より向こうにある海上”、とでもなるでしょうか。簡潔明快な定義だと思います。

さて、"in the offing"という成句になると、意味は、


近い将来に起こりそうな、やがて起こりそうな


となります。陸にはたどり着いていないけれども、こっちにやってくるのが沖の方に見える、ということですね。

では、使用例を。


It’s always so much fun when there’s a new Apple product in the offing. The rumours of what it might be, the specs, the price points, those rumours simply proliferate in the weeks leading up to the actual announcement.
(Tim Worstall. Links 18 July: Apple iPhone 5 Rumours. Forbes. July 18, 2012.)


これから起こりそうなことは何も良いことだけに限りません。悪いことが起こりそうな場合にも、"in the offing"が使われます。


After selling 4,134 planes the past four years, Boeing Commercial Airplanes, the company's jetliner division, is racking up more cancellations than orders for new planes this year. Industry analysts warn that more cancellations may be in the offing as people are flying less in the global recession.
(USA Today. 2009.)


非常にイメージがしやすい成句ではないでしょうか。


2012年7月18日水曜日

海の日特集(3) ― maritime

海の日特集、3日目の今日は、"maritime"という単語を取り上げたいと思います。

言わずと知れた、海上保安庁の英語名称が"Maritime Safety Agency of Japan"であり、また諸外国の同様の機関の名称にも"maritime"という単語が用いられていることが多いですが、故に比較的馴染みがある単語ではないでしょうか。(海上保安庁の英語名称については現在は"Japan Coast Guard"ということになっているようですが、元々は、"Maritime Safety Agency of Japan"でした。)

さて、"maritime"という単語が、"mari-"と"-time"という2つの部分から成り立っているように見えてしまう(事実、そうなのですが)ことは仕方がないことだろうと思います。

実際、"mari-"は、ラテン語で海を意味する"mare"に由来しています。

では、"-time"は、時刻を意味する"time"に由来するのでしょうか?

答えはノーです。

辞書の語源欄でも確認できるかと思いますが、"maritime"の、"-time"は、時刻の"time"ではなく、ラテン語で最上級を意味する語尾である、"-timus"なのです。

このラテン語の最上級語尾である"-timus"が使われている英単語として、"ultimate"があります。

"maritime"の場合の語尾"-timus"は、“~に密接に関連している”、という意味で用いられているようです。つまり、海(mare)に関連した(-timus)、ということで、海上の、海洋上の、という意味になっているものです。


On the same day that Japan’s foreign minister was due to meet with his Chinese counterpart at the ASEAN security talks last week, three Chinese maritime patrol ships entered Japanese waters near the disputed Senkaku Islands.
(Kirk Spitzer. The South China Sea: From Bad to Worse. Time. July 15, 2012.)



2012年7月17日火曜日

海の日特集(2): エーゲ海と多島海 ― pelagic

今週は海に因む表現を特集してお送りしております。

さて、2日目の今日取り上げるのは、恐らく聞きなれない、見慣れない単語ではないかと思います。釣りが趣味の人は馴染みがひょっとして馴染みがありますか?


The controversial commercial fishing factory ship FJ Margiris is heading for Australian waters to fish on a scale never seen in this country before.

The massive vessel has been linked to over fishing in other parts of the world and recreational anglers in Tasmania are worried she will decimate stocks of the small schooling fish that are a very important link in the food chain for our endangered blue fin tuna and other pelagic species.
(Scott Levi. The Big Fish takes a look at the big fishing factory ship. ABC Sydney. July 14, 2012.)


"pelagic"という単語なのですが、“遠洋の”という意味の形容詞です。語源はギリシャ語のpelagos(海)に由来します。

私自身、"pelagic"などという単語を見るのは初めてでしたが、スペルから何となく"archipelago"(多島海)という単語を思い出したので調べてみたら、やっぱり!

"archipelago"という単語を学生時代に丸暗記したことのある方は多いと思いますが、この単語は接頭辞の"archi-"とギリシャ語のpelagos(海)が結合したものです。つまり、"pelagic"と語源を共通にするものです。

興味深いのですが、この語源分析からは、"archipelago"は“主要な、第一の”(archi-)、“海”となるはずですが、現代の意味では多島海とされています。

実は、"archipelago"はイタリア語で元々エーゲ海を指す固有名詞でしたが、エーゲ海に多数の島が見られることから、意味が転訛し、島の多い海、つまり多島海、となったものです。

ちなみに、“遠洋”の対義語は“近海”ですが、こちらは英語では、"neritic"という形容詞があります。語源はギリシャ神話の登場人物Nereus(海の老人と言われた海神)、もしくはNereid(Nereusの娘の1人)に由来します。



2012年7月16日月曜日

海の日特集 ― between the devil and the deep blue sea

今日は月曜日ですが、海の日の祝日でお休みを満喫されている方も多いかもしれません。

九州の豪雨は未曽有の被害をもたらしていますが、わたくしの住んでいる関東では概ね晴れの連休となり、梅雨明けのような暑い日々となっています。

さて、今週は海の日に因んで、英語での関連表現を取り上げてみたいと思います。

初日の今日取り上げるのは、


between the devil and the deep blue sea


という成句です。日本語では、進退極まって、とか、にっちもさっちも行かなくなって、という表現がよく使われます。また、少し文学的な表現ですが、前門の虎、後門の狼、というような表現もあります。

American Heritage Dictionaryの定義が非常に分かりやすいので見てみましょう。


idioms. between the devil and the deep blue sea. Between two equally unacceptable choices.


要は、"two equally unacceptable choices"ということなのです。

では、使用例を。


THURSDAY’S PUZZLE — Here we are, stuck in the middle of the week (sort of) together, and here’s where it starts to get tough. A few question marks pop up after some clues to indicate the presence of wordplay, the entries are ramped up, and the theme … well, anything could happen on a Thursday.

Today’s debut by Pawel Fludzinski is a romp through three idioms that all mean something like “caught between two undesirable outcomes.” We are potentially caught between A ROCK AND A/HARD PLACE, THE DEVIL AND/THE/DEEP BLUE SEA, and SCYLLA/CHARYBDIS. Not only that, but all three entries are split and placed right next to each other, so you might be able to get caught between these phrases if you inhale and are really skinny to boot.
(Deb Amlen. Stuck in the Middle. The New York Times. July 16, 2012.)


偶然にも同種の表現が出てきました。"between the devil and deep blue sea"という表現の他によく使われるのが、


between a rock and a hard place
between Scylla and Charybdis


という成句です。最初の表現が一番よく見られるものではないでしょうか。2番目の成句はギリシャ神話にちなむものです。

ところで今日の表現、"between the devil and the deep blue sea"について、何故、"devil"(悪魔)と"deep blue sea"(深海)なのでしょうか?

この表現の由来には諸説あるようですが、1つには船乗りの用語であると言われています。"devil"とは、船の外板を張る上で防水工事の非常にやりにくい場所のことを指すそうです。文字通り危険を冒して防水工事を行う訳で、困難な作業をするか、(防水工事の不備で)海底深く沈んでしまうか、という二者択一、という意味に発展したのでしょう。

もう1つの引用例を。


Social workers say the fathers are motivated by greed. "They use their daughters for money," said one social worker. "These girls are being exploited." The fathers, including Nasreen's, argue that the marriages offer an escape from poverty -- for the daughters as well as the rest of the family. "These girls are caught between the devil and the deep blue sea," said M.A. Majeed, regional manager of Al-Ameen Islamic Financial and Investment Corp., which sponsors vocational training programs to assist poor Muslim youth. "They are the children of parents with almost nothing to subsist on. Even the most wretched house in the Persian Gulf is better than the slums of Hyderabad."
(The Washington Post. 1994.)


今週のテーマにご期待下さい。


 
  翻译: