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2023年10月5日木曜日

atto-

2023年のノーベル物理学賞が欧米の3氏に授与されることが発表されました。

ニュース記事などによりますと、電子(electron)の動きを観測するためにごく短い時間だけ光るレーザー技術を開発したことが評価されたということです。

同じタイミングで発表された医学賞、生理学賞の方は、新型コロナウィルスのワクチン開発につながったメッセンジャーRNA(mRNA)の研究者に授与されましたが、一般人にはこちらの方が馴染みが深いせいか、物理学賞の授賞理由は素人にはピンと来ません。

ニューヨークタイムズ紙から引用です。


The Nobel Prize in Physics was awarded to Pierre Agostini, Ferenc Krausz and Anne L’Huillier on Tuesday for techniques that illuminate the subatomic realm of electrons, providing a new perspective into a previously unexplored domain.

Electrons move at a whopping 43 miles a second. This speed has long made them impossible to study. The new experimental techniques created by the three scientist-laureates use short light pulses to capture an electron’s movement at a single moment in time.
(Nobel Prize in Physics Awarded to 3 Scientists for Illuminating How Electrons Move. New York Times. October 3, 2023.)


電子の動くスピードというにはものすごい速いそうで、何と秒速43マイル(!?)なんだそうです。故に電子の挙動を観測することはこれまで困難とされていました。

電子の挙動を観察するためにはごく短い時間だけ光るフラッシュのような技術が求められていたということなのですが、「ごく短い時間」というのがこれまた常人の理解を超えた世界の話で、


attosecond


という単位なのだそうです。これは10のマイナス18乗秒(one quintillionth)のことで、日本語では「アト秒」と訳されています。


To study the movement of electrons, the scientists had to use pulses of light that last only on the scale of attoseconds; an attosecond is one quintillionth of a second. The number of attoseconds in a single second is the same as the number of all the seconds that have elapsed since the universe burst into existence 13.8 billion years ago, according to the Royal Swedish Academy of Sciences, which awards the Nobel Prizes.
(ibid.)


上述の通り、"attosecond"のatto-は、10のマイナス18乗を表す接頭辞なんですが、国際単位系(SI)で定められているものです。

調べてみると、小生も「マイクロ」、「ナノ」、「ピコ」までは聞いたことがありますが、その次が「フェムト」、次いで「アト」と続きます。

atto-という接頭辞はデンマーク語の数詞で18を表すattenから来ています。

ちなみに、「フェムト」(10のマイナス15乗)もデンマーク語で15を表すfemtenから来ています。



2017年12月21日木曜日

inauthentic? unauthentic? ― inauthentic

フェースブックが迷惑な友達リクエストをブロックする機能を追加するそうです。


Facebook, like every social media platform, has issues with harassment and bullying. In order to prevent certain types of harassment, Facebook is introducing some new features to help prevent unwanted friend requests and messages.

“We’ve heard stories from people who have blocked someone only to encounter the same harasser using a different account,” Facebook Global Head of Safety Antigone Davis wrote on Facebook’s blog. “In order to help prevent those bad encounters, we are building on existing features that prevent fake and inauthentic accounts on Facebook.”

Let’s say you block someone and then that person decides to create another account so they can contact you. With these new tools in place, Facebook is aiming to recognize when someone does that and prevent them from sending a message or friend request to you. Facebook is using signals, like IP addresses, to recognize when someone has created a fake or inauthentic account.
(Megan Rose Dickey. Facebook has new tools to prevent unwanted friend requests and messages. Tech Crunch. December 20, 2017.)


私自身はあまりフェースブックを使わないのですが(アカウントだけ持っています)、たまに全く知らない(そしてやや怪しい感じのする)人から友達リクエストを受け困惑することがありました。そのまま放置していますが・・・。

フェースブックによると、友達申請を却下してもアカウント名を変えてしつこくリクエストを送信したり、嫌がらせをする輩が後を絶たないらしく、そのようなアカウントの挙動を検出しブロックする機能を実装するようです。

ところで今日の一語なんですが、


inauthentic


という単語に目が留まりました。

フェースブックのアカウントというのは基本実名のようですが、怪しいアカウントというのは引用記事中、"a fake or inauthentic account"と表現されています。

"inauthentic"とは、"authentic"でない、ということです。つまり、否定の接頭辞in-が付加されたものであることは敢えて言うまでもありません。

私は漠然と、"authentic"の否定形は"unauthentic"とイメージしていたので、意外でした。

ところで、辞書を引いてみますと、"inauthentic"も"unauthentic"も両方載っており、意味もほとんど同じようなものです。従って、どちらも正しいということになります。

ネットで検索してみると、同じような疑問を持っている人は多いらしいのですが、ここで否定の接頭辞in-とun-については、in-はラテン語源の単語に付くことが多く(il-やim-などはin-の異形)、un-はゲルマン語起源の単語に付くことが多いといった情報もありました。

"authentic"はギリシャ語からラテン語を経由して英語に入ってきているので、上記の説明からするとin-が適当ということになります。

なお、コーパスでの検索結果では、"unauthentic"よりも"inauthentic"が圧倒的に多く、その意味でも"authentic"の対義語は"inauthentic"が一般に普及していると言えそうです。


 
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