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うつわ屋のつぶやき

うつわ好きの甘庵が、やきもの・吹きガラス・漆器などの、四季折々の身近な和食器を使う楽しさをお伝えします。荻窪銀花で催される企画展の器をご紹介し、使い方から、作り方、作り手のことなど、毎日お伝えします。

薪の灰が降った釉調

ご紹介する光藤佐さんの白磁皿4寸は、
白磁というより青白磁に近い淡い緑の釉調です。

21mitufuji_0302.jpg
光藤佐 白磁皿 4寸 2,640円
径12cmH2.5cm


これは穴窯で焼成されて燃料の薪の灰が、
溶けた釉薬に降り注ぎ溶け込み、
白磁の釉調を青みを加えました。

21mitufuji_0304.jpg

灰の中に含まれる鉄分の発色によるものです。
歴史的には純白を目指して工法が工夫されて、
鉄分などの金属分が少ない素地や釉薬を使い、
焼成時にはサヤと呼ばれるやきものの箱の中にいれて、
灰や炎の影響を受けないようにして、
白を追求していきました。

21mitufuji_0303.jpg

その結果に近いことを、
純度高く精製された材料や、
灰のでないガスや電気などで焼成し、
完成度が高いというよりも、
無機質な白磁や白い器が、
量産日見かける白い器です。

21mitufuji_0305.jpg

その逆方向の発想で、
薪を燃料にした穴窯で、
直に置いて焼き灰や炎による、
窯変が出るように仕掛けて作られたのが、
光藤さんの作り出す器で、
この白磁皿もその方法で作られました。

意図的に重ね焼きもしているので、
皿の見込み部分には「目あと」があり、
使い込んだ時の景色になる目論見です。

               甘庵
 

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実力派の鉢

ご紹介する野波実さんのマット釉そり鉢は、
艶のない釉調もあって控えめな存在感なのですが、
鉢として高い実力を備えています。

21nonami_0153.jpg
マット釉端反り鉢 7,000円
径21cmH8cm 単品


器に大切な料理映えがします。
料理や食材を選ばず引き立て、
美味しそうなしつらえになります。

21nonami_0155.jpg

柔らかな蹴轆轤で挽かれたフォルムや、
艶のない白磁釉の効果で、
磁器なのに柔らかく温かみを感じます。

21nonami_0154.jpg

それでも磁器の素地の丈夫さと、
洗いやすく匂い移りも少ない、
日常使いしやすい鉢です。

21nonami_0156.jpg

一緒盛りはもちろんのこと、
贅沢な丼鉢としてパーソナルに使うのも、
楽しめる鉢です。

               甘庵
  


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心懐かしむ花入

秋らしい夜空に月を見ました。
もうすぐ迎える中秋の名月にむかって、
丸くなってきている月は、
満月の月とは一味違う味わいを感じました。

18arakawa_0151.jpg
荒川尚也 霙文花入 棗 32,400円 旧価格品 単品
径20.5cmH20.5cm


ご紹介する荒川尚也さんの旧作の花入に、
イメージが重なりました。
霙文という複雑に発泡させたアワ文は、
クレーターなどの月の表情のようです。
丸めの棗型は満月前の姿に重なります。

18arakawa_0152.jpg

霙文は発泡させたガラスを作り、
それを粉砕して発泡剤を溶かして中で煮詰め、
泡の入ったガラス粉に発泡剤が絡ませます。

18arakawa_0153.jpg

坩堝から巻き取ったところに、
上のガラス粉を全面にまぶしつけて、
坩堝にいれてその上にガラスの層を作り、
細かい泡を絡みながら発泡させて、
白くみえるような細かなアワ文に仕上げたのが、
この花入の霙文です。

18arakawa_0154.jpg

手間がかかり、
単価も高くなることなどから、
現在はほとんど制作されていません。

若くてエネルギーも溢れていて、
寝ずに根を詰めて作っていた、
ごく一時期に作られて作品です。

荒川さんの作品には、
検品チェックの後にサインをいれています。
そのほとんどが晴耕社ガラス工房から、
Seikousyaと刻まれていますが、
この花入には単品制作などのときに使われる、
Naoyaと刻まれています。

                   甘庵
 


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秋の野原の匂い

秋分の日の荻窪は朝の小雨のあと雲がおおく、
しっとりした秋を感じています。
井の頭公園のすぐ脇で生まれ育った甘庵は、
四季の移り変わりを身の回りに自然から感じていました。
冬は光の煌めきが好きでした。
春の色の移り変わりが好きでした。
夏の木陰の風が好きでした。
秋の匂いが好きでした。

21chujo_0261.jpg
中條正康 武蔵野図撫角向付 小 4.950円
□10cmH5.8cm


そこらにいっぱい野原があって、
整備された公園以外にも、
野趣な景色が楽しめました。
ススキなど丈の高い草野なかを分いるのが、
冒険に感じて楽しんでいました。

21chujo_0263.jpg

今日ご紹介する中條正康さんの角向付に描かれた、
武蔵野図はそんな記憶を思い起こさせます。
10cm角の大きさの器に、
広がりを感じ取れる逸品だと思います。

21chujo_0262.jpg

武蔵野図撫角向付小が名称ですが、
この撫角は角でも丸でもなく、
使い勝手からは丸の良さを角の良さを備えていて、
造形としては角がないことで、
描かれた構図に広がりを感じ取れます。

21chujo_0264.jpg

尾形乾山の作品をリスペクトしていますが、
サイズや形状やデザインが
中條さんならではのアレンジが施されていて、
現代の食卓で使い勝手の良い器に仕上がっています。

                  甘庵
  


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秋雨は渋茶の甘味

荻窪は昨日激しい雨が降りました。
朝にも小雨が降りました。
しとしととした降りかたで・・・秋雨ですかね。
やっと秋を感じています。
今は曇り空になっています。
湿度は多くなっていますが、
あのジリジリした日差しがない分とても楽です。

昨日までオヤツにアイスキャンディを頬張っていたのに、
今日は煎茶や紅茶で甘いものが食べたくなります。
加藤さんの財急須や財ポットの出番が多くなります。

22kato_0404.jpg
加藤財 急須 横手 黒平 11,000円
容積230cc


ご紹介しているのは、
いかにも煎茶が思い浮かびそうな、
横手の平たい濃茶の急須です。

22kato_0405.jpg

お茶のコマーシャルやお茶の産地のポスターなどに、
多く見かける気がします。
お茶を淹れた後に茶葉を見極めるときに、
お茶に携わる方たちには茶葉が重ならず、
平たい形の急須を好まれるからかな・・・と、
推測しています。

22kato_0406.jpg

丸型に比べると見えがかりの大きさのイメージより、
容積が少なくなりますが、
本体の径が大きくなる分のバランスで、
蓋の系もわずかですが大きくなり、
茶番の出し入れも多少楽になるかもしれません。

22kato_0407.jpg

平たいタイプの急須の注ぎごこちは、
意外なほどスムーズで注ぐ具合や操作がしやすいです。
もちろん財急須なのでスルスルスパッとキレます。

今日のオヤツは、
渋茶にこってり甘いお菓子に決定です。

                  甘庵
 

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優美なワイングラス

今日ご紹介するのは曲線の装飾性が美しい、
巳亦敬一さんの新スキ変形ワイングラスをご紹介します。
的確なのですが作品の説明的な名称からは、
優美な姿を想像しにくいかもしれません。

21mimata_0124.jpg
巳亦敬一 新スキ変形ワイングラス 3,740円
径7.1cmH11.8cm 程よく入れて150cc


新スキはスキ(透明=素地のまま)で作っていて、
変形はカップ(ボウル)腰下の二方向に、
均等ではない被せガラスが施されているからです。

21mimata_0125.jpg

カップ部を下から包み抱える被せガラス部分は、
細かなモールが入り優雅な曲線で構成されていて、
花弁を受ける萼のようです。

21mimata_0126.jpg

使い勝手の良いデザインながらも、
繊細でいて柔らかな印象をもち、
花や植物を多くモチーフにした、
アールヌーボーの匂いを感じ取れます。
21mimata_0127.jpg

装飾性が省かれていって、
モダンデザインに移行していく歴史には、
別の美しいデザインも多く生み出されましたが、
それとは違う人の手から生まれる工芸品ならではの、
有機的な造形が心和ませてくれると思います。

アールヌーボーはジャポニズムが下敷きになっていたとか、
たしかに四季を楽しむ和のデザインに通じています。
このワイングラスは工業化されたデザインにない、
手仕事の器の魅力を感じとれると思います。

                 甘庵
 

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冷から温に少しずつ移行

今週末は秋分になります。
きっと少し過ごしやすくなるに違いない。と、
言い伝えをよりどころにしている昭和生まれです。
年齢もあっていしきしての水分補給を心が得ていますが、
衣替えならす飲み物替えの気持ちで、
少しずつ冷たい飲み物から温かい飲み物へ、
移行するようにしようと思っています。

体のためや温かい飲み物も美味しくなってきただけでなく、
季節を感じ取るセンサーを整えるのみも、
有効なのではないのかなと勝手な思いでいます。

21kubota_0344.jpg
久保田信一 長石釉縞柄小湯呑 2,200円
平均のサイズ径6.5cmH6cm 程よく入れて100cc


きっと先人たちもそんな感覚があったと思います。
今より四季の移り変わりもはっきりしていただろうし、
季節ごとの行事なども絡んで、
器も四季に合わせて使い分けることもあったと思います。

21kubota_0346.jpg

そこで今日は少し土っぽい小湯呑みをご紹介します。
久保田信一さんの長石釉縞柄小湯呑みです。
程よく入れて100ccほどの湯呑みです。

21kubota_0345.jpg

大きなマグカップなどを使っていることが多いと、
小さな湯呑みと思われるかもしれませんが、
急須から注ぎ分けて味わい、
間を見計らって二煎目を注ぎ味わう。

21kubota_0347.jpg

この間というか時間の流れる感じが、
秋の気配を汲み取れて、
心和む喫茶の趣なのではないかなと、
器を楽しんで使いたい器好きとして、
これもまた勝手に思い込んでおります。

                甘庵
 

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気持ちだけ秋のへ気配に先乗り

東京はいまだ真夏日数を更新していますが、
日本中が今年の暑さにぐったりしていると思います。
人だけではなく生き物全て、
魚介や農作物まで影響が出ているようですね。

21nonami_0411.jpg
野波実 白磁動物急須(横手) 6,500円
径10.2cmH10.8cm (ツマミの上まで)
程よく入れて350cc


それでも朝夕は少しだけ過ごしやすくなっていて、
「暑さ寒さは彼岸まで」という言葉にのって、
我慢は今週末までと期待しています。

21nonami_0414.jpg

それでも秋の日差しは強いので、
熱中症には油断せず水分補給は心がけましょう。
ただ、あまり冷たいものに頼らず、
胃腸のためにも温かい飲み物に移行していくように、
心がけようと思っています。

21nonami_0412.jpg

気分だけでも秋の気配に先乗りして、
茶菓子とほうじ茶のティタイムにします。

21nonami_0413.jpg

そんな気分に合わせるにぴったりな、
動くつまみが気持ちを和ませてくれる、
野波実さんの白磁動物急須横手です。

               甘庵
  

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ガラス好きの荒川さんの小品

台風一過で暑くなる予報に構えていたのですが、
曇りがちで予報より気温が上がらず、
少し楽な今日ですが、
いっぱい降った分が湿度は高く、
動くとやはり汗ばみます。

22arakawa_0504.jpg
荒川尚也 セロリ 2,100円 (旧価格) 
W12.5~13cmD3.7~4.3cmH2~2.5cm



気持ち的に涼やかなものをご紹介したくなります。
荒川尚也さんの吹きガラスではない小品です。
個性的な表情を持つセロリです。

22arakawa_0506.jpg


主な使い方として大きめの箸置きやカトラリー置きですが、
そのままオブジェとしての存在感に和んだり、
鉢やボールに沈めて花や枝を涼しげに抑えたりと、
使い方の工夫を楽しめます。

22arakawa_0505.jpg


坩堝から溶けたガラスを引き出して、
伸ばす動きを感じられる造形は、
ガラスという素材が大好きな荒川さんらしく、
一つずつの面白みがありながら、
まさにセロリを思わせる姿です。

22arakawa_0507.jpg


伸ばした方向に施された、
細かな立体的な線文が、
涼しげな煌めきを見せます。
セロリという馴染みのある気にもさせる、
不思議なフォルムに惹かれてしまいます。

                甘庵
  

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潔いフォルムと温もりのある素地のカップ

久々に雨降りの荻窪です。
日差しがない分気温は下がりましたが、
湿度が多くて過ごしやすいまではもう少しかな。
それでもこの数度気温が低いだけで、
温かい飲み物をゆっくり味わえる気持ちになります。

23onodera_0252.jpg
小野寺友子 白磁カップ 3,300円
左:径8cmH7cm 程よく入れて150cc
右:径9.2cmH6.5cm 程よく入れて180cc


今日ご紹介するのは小野寺友子さんの小ぶりな白磁カップです。
ソーサーなしの小ぶりなマイカップとしての使い方を、
イメージしていると思います。

23onodera_0254.jpg

よくコーヒーを飲む甘庵の好みとしては、
大きなマグでいつまでも入っているより、
このぐらいのサイズで飲むのが好みです。

23onodera_0253.jpg

ペパードリップで450ccほど淹れて、
三杯飲むという飲み方です。
寒くなると温め直したりしますが、
今頃はだんだん温くなっても、
案外きになりません。

20onodera_0686.jpg

それよりも、
飲み切ったカップにまた継ぎ足して飲む方が、
気持ちとして切り替わるような・・・。
気分として好みです。

小野寺さんの省いていくデザインらしいカップです。
直線的なフォルムは潔い気持ちが見え姿ですが、
磁器でも少し濁っている素地で温かみがあり、
手仕事の器の魅力を備えています。

                   甘庵
 


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財ポットの始まりの形

今日ご紹介するのは加藤財さんのポット白瓶子です。
整った丸いフォルムが財ポットの人気です。
その姿とはべつのタイプと思われがちですが、
実はこの瓶子型こそが財ポットのはじまりの形で、
丸さや隅々までの行き届いた納まりなども、
これがオリジナルの形であり原型です。

22kato_0392.jpg
加藤財 ポット 白瓶子 13,200円
容積300cc


それまで急須だけを作られていた加藤さんへ、
「煎茶以外の茶葉のため容積の大きなものを」という、
多くのファンからの声があり、
はじめてポットを作ったときに、
自分らしいオリジナルの形をと作られました。

22kato_0393.jpg

その後に容積をもっと増やすため、
丸い急須の相似的で大きくした丸型や、
安定感をより増やす茄子型などが増えていきました。

22kato_0394.jpg

大きい容積は丸型に任せて、
瓶子型の存在はフォルムの美しさをより追求し、
使い方も急須よりも容積多く、
ポットよりも少なめの位置を担当している形です。

22kato_0395.jpg

やきものの古典的な形としての、
梅瓶をリスペクトしてつくられたそうです。
気品のある美しい道具としての、
存在感があるポットだと思います。

                甘庵
   

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ガラスだからなお多目的なそばチョコ

今日ご紹介するのは巳亦敬一さんのそばちょこ蕾Rです。
人気の蕾文シリーズが活かせれているデザインのそばちょこです。

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巳亦敬一 そばちょこ 蕾 R 4,180円
径8.6cmH7cm


そばちょこは手に持てて、
盛って良し、飲んで良し。
お料理でもデザートでも飲み物でもと、
多用に使える多様性の高い器です。

21miamata_0040.jpg

さらにガラスだからこその華やかさが加わり、
それでいて不透明な彩りガラスも持つ個性から、
出番のシチュエーションを広げています。

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そばちょことして気軽な使い方から、
ソーサーを加えて少し気取ったしつらえにしたりと、
色々な表情も楽しめます。

21miamata_0041.jpg

ベージュという控えめで地味な素地の色合いが、
料理など盛り付けるものを、
美味しそうに引き立ててくれる、
器としての一番の力を発揮してくれる、
実力のあるそばちょこです。

              甘庵
  

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見た目は控えめ使い勝手は上等

今日ご紹介するのは野波実さんのマット釉取り皿です。
艶消しの釉薬とさりげないフォルムで、
自己主張は控えめですが、
出番の多い取り皿としては優等生です。

21nonami_0121.jpg
野波実 マット釉取皿 2,600円
平均のサイズ径16cmH4cm


適度な深みのある見込み、
料理が乗るとパッと華やぐ盛り映え、
丈夫で扱いやすく、
重なりも良いという、
使い勝手の良い取り皿です。

21nonami_0123.jpg

白い釉薬で磁器なので、
量産の磁器のイメージから、
陶器をよく使う方には、
温もり感がないと思われがちですが、
蹴轆轤で一個挽きした、
ゆるやかな轆轤目とフォルムは、
手に馴染む温もりのある取り皿です。

21nonami_0122.jpg


野波さんの器によくあるあるで、
気づけば使っている。
そんな取り皿になります。

21nonami_0124.jpg

食材や素材を選ばず、
料理からデザートまで、
不思議なほど美味しそうな盛り映えする取り皿です。

                    甘庵
 

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